今回は試験対策をしたい人向けの本の紹介です。
この本の題名を見て、みなさんはどう思われたでしょうか。
試験は暗記、当たり前じゃないか?
もしくは
理解が大事だろ!
という反応があるかと思います。
おそらくこの反応の違いは世代によるものでしょう。
碓井氏は1984年生まれ、ゆとり世代より少し前にこの世に生を受けて、
偏差値35の高校時代から見事に関西学院大学に合格し、司法書士の資格を在学中に得、大学卒業後に一年四ヶ月で公認会計士の資格をとった経歴をもっておられます。
公認会計士の資格は平均年数2~4年程度かかる
公認会計士試験を始める前に知っておきたい合格までの年数と勉強時間
といわれていることからも短時間で合格されたことがおわかりになるでしょう。
私自身も著者と世代が同じぐらいなのでよくわかるのですが、
日本の教育は八〇年代ぐらいから徐々に「暗記から理解へ」という方向に舵をきっていき、私たちが義務教育を受けていた九〇年代には理解重視、暗記軽視が当たり前になっておりました。
氏はその時期に学校へ通っていたわけでして、先生や予備校業界、マスコミなどから
耳にタコができるほどに「理解すれば問題は解ける」と聞かされてきた世代なのです。
この本の題名は「試験は暗記が九割」とたいへん直截的なものでして、その理由は
氏の受けてきた理解重視の教育についての旗幟を鮮明にしたものといえましょう。
この本に於ける要約すべき事柄は以下の三つとなります。
1 試験は暗記すれば合格できる
2 暗記の技法
3 試験前までにしておくべき体調及び日程の管理
2,3については読者がそれぞれ取捨選択して
身につければよいものです。
やはり一番の主張は1 試験は暗記すれば合格できる でしょう。
つまり、試験とは暗記でほぼ終わるものだということです。
理解していたとしても、試験時に記憶して、すぐに引きずりだし、試験用紙を埋めることができなければ合格はできない。この当然のことを誰もが意識しなければ
合格は覚束ないだろう、と著者はいいたいのです。
考えてみればわかることで、試験は試験時間が決まっており‐六〇分から一二〇分ぐらいが大凡ですが‐その間に問題を解かなければなりません。
もし、あなたが暗記できていないとすると、まず時間以内に問題が解きおわることはないでしょう。なぜならば、試験作成者は暗記して解くことを想定しているからです。
それを考慮した上での、試験時間なのです。
いってしまえば、考えて解くことなど誰も求めていない。今まで学校や参考書などで
勉強してきたことを素直に吐き出すことが受験者には求められているのです。
ここにもし、「考えれば解けるのではないか、理解してさえいれば」という考えがちらついた人、あなたは試験に落ちます。
例えば、日本史で必ず習い、問題にも出る年号を思い出しましょう。
鎌倉幕府の成立といえば私の頃は1192年でした。「いいくにつくろう鎌倉幕府」
で覚えていたわけです。今だと、六つほど候補があるようですが、しかし当時は1192年が正解だったのです。
当然、1192年と解答用紙に書かなければ点はもらえませんでした。
ここまでは誰もが疑問の余地なく、暗記、で解けると思うでしょう。
ところが、碓井氏の眼目はそこにあるのではありません。
碓井氏は所謂、難関大学の入試試験によくでる論述問題や公認会計士の試験も
この年号の問題と同様だと見做すのです。
巷間、東大の日本史や世界史は論述問題が出るので、単なる暗記では解けない、ということをよくききます。
しかしながらこの考えは間違っています。
そこで出ている問題は教科書や資料集に書いてある歴史的な事実のみを問うています。これは受験生の想像力や教科書外の知識を求めているのではなく、
教科書に書いてあることをそのまま書け、という問題なのです。いってしまえば、私大にありがちな一問一答式の問題とは違うようで、根本は同じというわけです。
違いがあるとすれば、暗記する箇所、暗記の仕方が違うだけなのです。
すなわち、論述問題の解き方とは一問一答の問題集でいうところの
「答」ではなくて「問」の部分の{暗記}なのです。
論述が解けない人というのは暗記する必要のある箇所とは異なるものを暗記しているので解けないのです。
碓井氏の本における暗記とは上記のことを指しています。
普通の人が考える暗記の範囲は年号的なのです。
つまり、暗記だと考えている範囲が狭すぎるのです。
暗記とはもっと広い範囲においても有効であり、試験に受かるためには必須な
ことだといえるでしょう。
著者は様々な問題を本の中で紹介することにより
我々の暗記に対しての考えを新たにしてくれています。
何かしらかの受験生は一読する価値ある本といえます。
市販で売られているような理解の大切さを説く本よりも、遙かに実践的で、効果的な使える実用書です。