「また、騙されちゃった」
そういうニュース、よくありますね。
代表的な事例としては
あとから聞いてみれば、なんでそんなのに騙されてしまうのか。
世の中には頭の弱い人がいるんだなあ。
なんて思っているそこのあなた!
次はあなたが狙われる番かもしれませんよ。
というわけで、今回紹介する本は
岡本真一郎『なぜ人は騙されるのか』です。
今回の記事内容は以下の通りです。
- 騙される理由
- 対策
- 第五章 フェイクニュースについて
人はなぜ騙されるのか。
脳には二つの情報処理の方法がある
人の情報の受け取り方は二つあります。
ヒューリスティック(発見的)処理
中身を吟味せず表面的な手がかりで説得を受け入れるかどうかを決める。話し手の事が好きとか、専門家が喋ってるから正しいという判断の仕方。
システマティック(体系的)処理
説得に用いられた議論の内容について妥当か妥当でないかを熟慮した上でそれを受け入れるか判断をする。つまり、総合的な判断力。
当然、システマティック処理のほうが人から騙されにくくなることは自明ですね。
つまり、我々が騙されてしまうのはこのシステマティック処理をうまく機能させることができない場合にだまされてしまうというわけです。
人を騙すためのテクニック-ヒューリスティック処理を使わせればいい
詐欺師達はシステマティック処理を使わせないようにして我々を騙すともいえます。
たとえば、化粧品の広告が良い例でしょう。
肌が綺麗な女性や有名な女優、「一ヶ月で効果がでる!」などの文句。
そういったものに触れると、人はヒューリスティック処理しがちになってしまうのです!
ヒューリスティック処理が必要な理由
しかし、ヒューリスティックが必ずしも悪いかといえばそうではありません。
そもそも我々はあらゆる分野に精通しているわけではないし、学習の初期段階に置いては誰もが無知です。善悪の判断などつけられません。
そして、ヒューリスティックに処理していくことが、一定の知識や方法をいっきに掻き込ませ、学習効率を高めるともいえるわけです。
それにいちいちシステマティック処理をしていくというのはたいへんな作業量です。
生きていれば即座に判断せねばならぬこともあります。そのためシステマティック処理だけでは足らないわけですね。
騙されるという観点からしてみればヒューリスティック処理はまずいのですが、人間が生きる上においては必要な処理なのです。
第五章から見るインターネットのフェイクニュース問題
Twitterは情報を偏らせるのか
インターネットでの知識や意見の分布について
Twitterや特定の人間が集まるサイトでいわゆるフェイクニュース(fake news)が作られやすいという話についてです。
問題はそのニュースが正しいのか正しくないかなのですが、その境界は曖昧です。
フェイクニュースになる情報とは?
どんな情報がフェイクニュースになってしまうのでしょうか。次をみてください。
- 全く謝った情報
- 正誤が混在した情報
- 正しいと主張している根拠が不明確
- 誤った内容を提示してなくても誤解を招いてしまう情報
- 送り手が冗談で発信したものが他人から本当だと思われてしまう情報。
フェイクニュースが発生する理由とは?
では、誤った情報が発生するのはどうしてなのでしょうか。
- 初めから偽情報と承知で伝えようとする
- 誤った情報とは知らずに伝える
- 内容を誤って解釈して人に伝えてしまう。
- 間違っているかもしれない、と思っても面倒なのでそのまま伝える。
私も騙されそうになった話
最後の発生理由、私はけっこう出くわすことがありますね。特に服屋で服を買いに行き、店員と話していると、意外に嘘をつかれることや知ったかぶりをされることがあります。
たとえばベルルッティというブランドがあります。
去年まで、そこのブランドのデザイナーはアッカーマンという人でした。今はクリス・ヴァン・アッシュになっております。
その情報が流れて、ベルルッティのお店に「春物はクリス・ヴァン・アッシュがデザインしたものらしいですが、いつから発売ですか?」ときいたところ、「クリスは冬からです。春はアッカーマンのものです」といわれました。
デザインをみれば明らかにアッカーマン作ではないとわかるし、何よりベルルッティのインスタグラムにクリス・ヴァン・アッシュの春物として紹介されているわけで、どう考えても店員さんが間違っていたわけです。
つまり、彼はクリスが担当するようになっていたことを知ってはいたが、春からだとは知らなかった、ということになります。
少し、問い合わせてくれれば直ぐに分かったであろう事をサボってしまったために、フェイクニュースが生まれてしまった好例といえるでしょう。
SNSは人に矯激な言辞をもとめるか
さて、SNSは世論の分断と尖鋭化を進めてしまうという話があります。事実はどうなのでしょうか。
まずSNSの情報の共有や分布の仕方は次の二つによって構成されています。
- フィルターバブル
- エコーチェンバー
の二つがある。
フィルターバブル
自分の意見と似た人間をTwitterでフォローし、同質な人間ばかりがかたまっていくことを意味します。
エコーチェンバー
Echo(谺〈こだま〉のこと。)同質の人間をフォローすることで、似たような発言が増幅され、フォローしあっているもの同士の意見が過激になることを意味します。
例えば、自民党支持者は同じ自民党支持者をフォローします。立憲民主党や国民民主党や共産党や社会党などはあまりフォローしないでしょう。
これがフィルターバブルですね。
そして自民党支持者同士の発言が何層にも重なり合うことで拡張器のように声が響き合い、威力を増していく。
これがエコーチェンバーということですね。
しかしながら、この二つの特性が少なくとも日本に於いては成り立っていないとされています。
田中辰雄・浜屋敏の調査によれば、分極化が進むも、意見の過激さについては、むしろ寛容になっていた。
この本に紹介されている田中、浜屋の文章のリンクもはっておきます。
つまり、確かにフィルターバブルは起こるのだが、エコーチェンバーが起こるかは何とも言えないようですね。
Twitterは私ズンダもやっておりますが、確かにフォローは同じような考えをもっている人たちをフォローすることが多いです。
しかし、インターネットをやっていると時たま他の思想をもった方々の情報や書き込みが目に入ってくることがあるために案外、蒙を啓かれるということはあります。
予想外の情報が飛び込んでくる、ということを考えればインターネットによる思想の尖鋭化は意外に防げるのではないかともおもいますね。
フェイクニュースに対抗する方法とは?
自分で出来るフェイクニュース対策は以下の通りです
- ファクトチェックをするNPO法人やメディアがある。彼らを参考にする。
- 比較的、信用できるメディアを選ぶ。
- 自分の判断には誤りがある可能性があると思っておく。ただし、人には素朴実在論があるから気をつける。
素朴実在論は「自分は他の人間より賢いから、バイアスはかかっていない。そして、誤りを修正できる力がある」という考えです。傲慢ですが、こうなりがちですね。
人々一般がフェイクニュースに騙されないように教育する方法は次のようになります。
- 本人に事実か虚偽かを見分けようとする構えをもたせる。
- 怪しい情報は表示すべし。ファクトチェックでタグをつける
- 修正は受け手が信じているメディアからの修正のほうが効果はある。
- 修正は具体的なデータとか画像が効果あり。
- 事前にフェイク情報への免疫を与えておく。
などです。
信頼しているメディアが情報訂正を行えば、「間違っていたのだな」と受け入れやすいし、画像や統計などがあれば納得できますね。
また、人はまちがえるものだという認識をもって情報と付き合うようにしていけば、そういった訂正や誤報などにも理解を示せるようになります。
終わりに
この本は人が騙される条件や方法が数多く紹介されています。
私ズンダの記事ではこういった具体例を紹介するのではなく、背中の筋のようにどの章を読むときも利用することができる重要な専門用語や思考法を提示してみました。
細かい具体的な話は本書にしっかりと詰め込んでありますので、どうぞお手に取ってみてください。実例が豊富なので容易に理解できます。
加えて、五章に関してはインターネットを使っておられる皆様が興味津々であろうフェイクニュースやTwitterの問題を扱った章をとりあげてみました。
特にはてなブログを更新していると情報の扱いについて考えなければならない部分もある、ということを考えさせられました。
フェイクニュースというほど影響力をもってなどいませんが、私の記事を読んだ誰かがひどい誤解をしないような文章をつくっていくことへの責任感がでてきました。
では、また次の記事でお会いしましょう。
ズンダでした。
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