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【感想】英語を学習する前に知って置くべき多くのこと 鳥飼久美子『本物の英語力』【レビュー】

 

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イラスト屋

 鳥飼久美子『本物の英語力』を紹介します。

 

 

本物の英語力 (講談社現代新書)

本物の英語力 (講談社現代新書)

 

 

 


 

 鳥飼氏はNHK「ニュースで英会話」に出演なさってますので、もしかすると知っておられる方も大勢いらっしゃるかもしれません。
 
 氏はここ数年、かなり数多くの英語本を出し、日本の英語教育に警鐘を鳴らすと同時に、具体的にどう勉強していくべきなのかといった本も刊行しておられます。
 
 「はじめに」において氏は「英語格差」(English divide)という概念を説明します。
 これは英語ができるか否かで世界中の人々とやりとりができるか、世界の情報を素早くつかむことができるかどうか、そういった差がつくことを意味します。

 それゆえ、我々が英語を勉強しなければならない理由の一つと仰います。
 
 まず、英語学習の基本原則として次の二つを挙ておられます。

 

 

①ネイティブ・スピーカーを目指すのではなく、自分が主体的に使える英語―「私の英語」を目指す。

 ②英語を覚えようとするのではなく、知りたい内容、興味のある内容を英語で学ぶ。〈これは、内容と言語を統合して学ぶという新しい学習アプローチに繋がる考えです〉

 

 

 実に大事なことがかいてあるとおもいます。
 この本は学習法について書いているというよりも、学習前の心構えを説いている本だと思って読むべきです。
 

 学習法についてだと私が以前、紹介したDaiGo氏の本やその他の英語本のほうが優れています。

 

zunnda.hatenablog.com

 

 よって本記事においてはこの本における英語学習の心構えについてとその理由について触れてみたいと思います。

 

 

 

 ①の内容。それぞれの英語とはどういう定義か。

 CEFRの存在

 

 
 鳥飼氏は学習前の個々人に「英語を使える」ことの意味を考えなおすように誘っておられます。

 

 CEFR(欧州言語共通参照枠)という各言語共通の評価尺度があります。
 これは「can-do」という形での能力記述尺度を用いており、「その人が外国語で何ができるのか」を文章にすることで、どんな言語であっても同一の基準でその水準を測ることができるという優れた評価尺度です。
 
 このCERFの基盤には複言語主義があります。
 複言語主義ではある個人がいくつかの言語を使用するとして、その言語を生活状況にあわせた水準で使うことができればよいではない、という考えです。
 
 もともとオーストラリアやカナダのケベック州のように多文化であったり、別の民族がいるような国では多文化主義が流行ります。
 それゆえ、多様性を認めるという必要性がでてきてしまい、複言語主義が擡頭していったのです。

 

 つまり、各個人の「必要性=ニーズ」によって英語をどこまで勉強するかは色々である。トイックで990点とる人も、600点とる人もいてよい。
 
 点数では測ることが出来ない部分があるし、点数が低くても、英語で困ることがないのであれば特に非難されるようなことでもない、というわけです。

 
 必要な英語が何かを考える

 

 しかしこの考えはそれらの国に限らず、我々、日本人にも当てはめることができますね。
 というのも、英語をどこで、どのように、何のために使うかは人それぞれだからです。
 漠然と「英語ができるようになりたい」といってもその人の目的や職業によって異なるわけです。

 

 たとえば、この本の「第十四講 仕事に使える英語」では鳥飼氏が「海外での仕事で実際にどの程度の、どのような英語が必要か、特に英語圏以外で国際共通語としての英語使用について体験からご教示下さい」と呼びかけたところ数通の手紙が帰ってきたらしいのですが、千差万別なものであったと述懐しておられます。

 

 ある多国籍石油企業の方はアメリカにおいて「プレゼンテーションを行い、議事録も英文で作成した」という経緯から、「会話よりも英作文能力の方が大事だった」と記していたようです。

 

 このほかにも数人からの手紙内容が紹介されているのですが、どれも世の中でいわれているほど、「会話」が大事なのではなく、文法力に基づく英作文力や文化への知識が大事であったとのことです。

 

 英作文が一番使える

 

 ここから少なくとも次のようなことはいえると思います。

 

 日本人が英語で為すべきことは「会話力」というよりも「英作文力」である。
 
 実際、英作文が書けさえすれば相手に対して、少なくとも文法的には正確な英語を伝えられるようにはなるはずです。
 

 仮に発音がだめだとしても筆記さえすれば伝わる。
 英作文の重要性は仕事においてだけでなく、会話においてもいうことができますね。
 

 ②内容と言語とを統合するとはなにか?

  外国語学習の指導法には歴史がある。

 

 外国語学習の歴史というのをご存じでしょうか。
 当たり前ですが、外国人は外国人で何かしらかの言語を勉強しています。
 
 言語学習の歴史をふりかえってみましょう。

 

 文法訳読法→ダイレクト・メソッド→オーディオリンガル・メソッド→コミニカティヴ・アプローチ→「内容と言語を統合する学習」(CLIL=content and language integrated learning)

 

 というふうに変わっていきます。
 
 指導法がどうして変わっていったかというと、これらの指導法を以てしても外国語がなかなか上達しなかったからです。
 

 つまり、上達しない指導法の名前を羅列していったということになります。
 

 私ズンダとしては正直、できるようになる人は文法訳読法でも十分に外国語を使いこなせるようになっているとは思うのですが。
 結局は個人が何処まで外国語に本気で打ち込めるかが問題であり、それぞれの指導法に細かい欠点はあるといえども、目立って何が悪いといえるようなものではないとおもっています。

 

 CLILの原理とは何か?何を使って英語の勉強をすべきか。

 

 如上にあるCLILという指導法こそが最新であり、また鳥飼氏も一目おいている方法です。
 

 この学習には10大原理と呼ばれるものがあるので、記します。

 

 ①内容学習と言語学習の比率は、一対一
 ②生の教材(新聞、雑誌、ウェブなど)の使用を奨励する
 ③文字に加え、音声、数字、視覚(図や映像)による情報を与える
 ④多様なレベルの思考力(暗記、理解、応用、分析、評価、創造)
 ⑤タスク(授業内に行う課題)を多く与える
 ⑥協同学習を重視する
 ⑦内容と言語の両面での足場(学習の手助け)を用意する
 ⑧異文化理解や国際問題の要素を入れる
 ⑨4技能をバランスよく統合して使う
 ⑩学習スキルの指導を行う

 

 これだけあると頭が混乱してしまいそうになりますが、

 鳥飼氏曰く「英語を学ぶことに主眼を置くというよりも、自分の関心のあることを英語で読んだり書いたりみたりきいたりすることで学習効率があがる」とのことらしいです。

 

 難しいですね。これはもう自分の勉強している国へ飛んで、そこで学習しかないといえるかとおもいます。
 
 たとえば日本で英語を学習する際に十の原理をできるでしょうか。
 
 この指導法は詰まるところ、語学学習の限界性を示しているともいえます。
 
 

 終わりに
 
 

 最初に述べたように本書は外国語の勉強法よりも手前にある部分、心構えについて説いた本だといえます。
 そのため人によっては物足りなく感じてしまうかもしれませんが、語学学習の歴史や学ぶということの複雑かつ多様な世界を覗きみることができるという点で好著だといえるでしょう。
 ②で紹介したCLILという指導法に沿った内容が『本物の英語力』という本なのです。 
 すなわち、英語力は単語や文法や作文や会話や聴解だけにとどまらない多くの雑多な知識や理解を通して深まっていくものが『本物の英語力』だといえるでしょう。


 具体的な学習法は以下に紹介する本で学んでいくと良いと思われます。

 

 

 

英語上達完全マップ―初級からTOEIC900点レベルまでの効果的勉強法

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