だいぶ日にちが経っていますが、読書に関しては一貫してやっておりました。
しかしながら、紹介しづらい本が多くて、困っています。
というのも毎日コロナウイルスの報道で溢れかえり、他にあった問題が細事にしかみえなくなってしまったからです。
自分がいつ感染するのか。そして、感染したら命は助かるのか。後遺症は残るのだろうか。あるいは、友達や親に移したらどうしようなどと考えてしまっています。
そこで今回は、コロナウイルス発生後の世の中を鑑み、この一二ヶ月ぐらいの間に読んだ本を摘まみながら、お送りすることにしました。
では、どうぞ。

言わずと知れたマルクスとエンゲルス両者が「共産主義とは何か」を縷説した内容となっております。
本書に収載されているのは『共産党宣言』に先行して教理問答に倣った「共産主義の原理」と、情勢の変化に伴い、深察して書いた『共産党宣言』、そしてマルクスやエンゲルスらが共産主義の仲間達とやりとりしている手紙です。
光文社が十年以上も続けている「古典新訳」は現代人が読みやすいような訳と膨大な解説とで著名です。
森田成也氏の手によってなされた当該書にも、50頁にも渡る解説がつけてあり、この本の意図や執筆過程、原書であるドイツ語版から他言語への翻訳、日本における受容の歴史と邦題『共産党宣言』の正当性などまで、しっかりと載っています。
私がこの本を手に取ったのは、ここ一ヶ月ほどのコロナウイルスが齎した惨状のためです。
EU各国は入国審査をなくすために、シェンゲン協定を結び、EU間の国境を行き来しやすくしていましたが、報道でも言われているとおり、国境閉鎖に及んでいます。

こうなってみると、今まで盛んにいわれていた「グローバリズム」とは何だったのだろうかと考えざるを得ません。
「グローバリズム」は世界の隅々まで行き渡り、特に後進国の発展を生んできた側面があることは事実です。

しかし産業の空洞化により国内産業は海外へと移転、安い賃金の競争が世界で繰り広げられていきます。
A国の労働者よりもB国の労働者の方が低賃金で働いてくれている間は、B国が優先されますが、B国が発展していくと人件費は嵩んでいきます。
すると、企業はB国よりも安価でモノを作れるC国へと移ります。
こうした一種の焼畑農業のようなことを企業がやりつづけることで、自国の人々は失業したり、派遣労働のような形でしか仕事を得られなくなっていきます。
中流階級が崩壊し、底辺へと落ちてしまったのです。
それに対しての怒りが、ブレグジットやトランプ大統領の出現と絡んでいるというのが大方の見方です。
ついに一般労働者たちがキレたわけですね。
コロナウイルスと日本
インバウンド政策のむなしさが明らかになった
さて、日本もグローバリズムに呑み込まれています。
むしろ率先して入り込んでいったといってよいでしょう。
その結果がコロナウイルスに於ける政府の不甲斐ない政策にでています。
安倍政権発足当時から「インバウンド」なる言葉が急速に広がっていきます。
海外からの観光客を取り入れ、お金を落として貰い、日本経済に潤いを与える企図のことです。
しかし、この「インバウンド」はそもそも後進国のように自分たちでモノを作り、売りさばけるだけの力がない国々が行う政策でした。
それを安倍政権は事もあろうに先進国日本で、進めていたわけです。
みなさんは「インバウンド」によって日本が豊かになったと思ってはおられませんか?
「インバウンド」がどれだけの額を日本国にもたらしているかをご覧下さい
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001323877.pdf
その額なんと4兆8000億です。
これは日本のGDPの1%未満(日本のGDPは約550兆円)です。
つまり、「インバウンド」は稼げる、とはいっていても、この程度の稼ぎであります。
こんなことを書くと観光庁及び旅館やホテルの経営者に怒られそうですが、俯瞰してみるとインバウンドなどしなくても、稼げる方法はありました。
単純に日本人の観光客を増やせば良いのです。
http://www.mlit.go.jp/common/001273758.pdf
上記のリンクをみればわかるように、日本人が旅行に使っているお金の量はほぼ横ばいで代わり映えしません。
2014年だけやや凹んでいるのは増税されて8%になったからです。
日本人はアベノミクスで貧乏になった
当ブログでも何回も述べているように、そもそも日本経済は成長しておらず、更に我々の賃金は安倍政権以降、酷く下がっているからであります。
日本の未来を考える勉強会より
8%の増税で、リーマン・ショック以上の傾き加減で落ちていることがわかるでしょう。
さらに、10%にしたために余計に下がっています。
ここにコロナウイルスの影響が反映されるとすれば、相当、絶望的な状態です。
令和恐慌に入ったといわれています。
インバウンドの弊害ーオーバーツーリズムー
そもそもインバウンドは金儲けにしても、筋の悪い政策でした。
下記の本でも指摘されているように「オーバーツーリズム(over tourism)」(=海外から旅行者らの増大のせいで、現地住民達の生活や自然に支障をきたし、公害のようになっていることを指す。また、文化も異なる外国人観光客が現地住民との間で軋轢が生じ安い。「観光公害」ともいう。)となっています。
 このインバウンドのために、日本の国土が外国人に買われ、売られていることも当ブログですでに書きました。
こうしてみると「インバウンド」など、どうしてしたんだ?
と思ってくるでしょう。
勿論、その疑問は全く正しい。
インバウンド政策をとった理由
↑ですが、上の記事でも書いたように、これが政治家の考え方なのです。
つまり「グローバリズム礼賛者」なる人たちが官僚にも政治家にも企業にも多くいる。
彼らは日本国民がどうなろうがお構いなしなのです。
自己啓発系youtuber=anywhere族=グローバリスト=日本がどうなってもいい
上の記事にも書きましたが、グローバリストはanywhere族といわれています。
そして日本でも話題になった「上級国民」とは彼らのことを指しています。
彼らは基本的には世界中を股にかけ、一つの国家に依存して生きることがありません。
海外に飛び交って生きているホリエモンやメンタリストDaiGoなどを想像してみるとわかりやすいでしょう。
特にDaiGo氏は海外のリゾート地で過ごしていたところ、出国禁止になってしまったために日本に帰れなくなってしまっています。
しかし、彼はyoutubeやニコニコでお金を稼ぐことができてしまうので、金銭面で困ることはありません。
そら、ホームレスのことを小馬鹿にするわけですな。
これがanywhere族の最たるものです。
youtubeやニコニコ動画で会員を募ったり、広告費を収入として生活の資を十分に蓄えています。
そんな彼らにとって日本は腰掛けの一つに過ぎません。
我々のように何かに帰属していないと生きていけない人々とは違います。
※ちなみに、サラリーマンをやったり商店をやったりしている人々はsomewhere族といいます。
この当たりをイメージするにはyoutubeチャンネル「Big Think」をご覧になってください。
そんな彼らanywhere族のことばかりを意識して、政治家は政治をしています。
日本では自民党が経団連の僕(しもべ)になり、大企業優遇策ばかりをとってきました。
アメリカでは大企業による政治家への献金、スーパーパックというのがずっと問題になっています。
↓「アメリカで政治・金融腐敗が進む理由とは」
http://www.nihonkosoforum.org/img/npitoukan2.pdf
政府が処置を見誤った場合ー暴力革命の可能性ー
コロナウイルスへの経済対策
現在、コロナウイルスによる経済悪化を凌ぐために経済対策が練られております。
報道では気球観測がでており、今の政権が我々一般人に何をしてくれるかはわかりません。
旅行券や和牛商品券、魚野菜券、世帯につき二十万支給など色んな案が飛び出しています。
Twitter上では「日本銀行券」という至極真っ当な意見がトレンドになっています。
アメリカで新規失業保険申請数が328万にも及び、それが話題になっています。
日本も同じように失業や雇い止めを食らう人々がでてきているはずです。
そんなときに「肉だけかえます。野菜だけ買えます」では用途が狭すぎて機能しません。
それゆえ、日本銀行券を渡すのが順当なのです。
しかし、はっきりしているのは日本政府は早急に日本国民を助ける気などないということでしょう。
アメリカにせよイギリスにせよ、緊急の経済対策をすでに発表しているのにもかかわらず、日本政府は未だに「検討止まり」なのです。
こういった国民を助けようとしない政治を行う国において、どんなことが起こってしまうのか。
窮乏した人々を放置すると国家はどうなるかー内戦の確率が高まるー
当然、2chの管理人であったひろゆき氏が述べたように「無敵の人」の増加も考えられますし、あまりにも格差が広がっていけば内戦状態になるでしょう。
多湖淳『戦争とは何か』(中公新書)(P96)によれば不平等によって内戦は引き起こされるとのこと
引用します。
1990年代以降、内線の原因として有力視されているのは、不平等と不満である。
不平等が固定化し、制度化されていくと、ある属性をもった集団間の「水平的な不平等」が生まれていく。*1政府や社会のあり方によっては、性別や民族、言語や宗教の帰属の違いによって自由や生活に格差が生まれうる。
つまり、同じ国に住みながらも不平等が続くと、人々の間で不満が溜まっていき、何時の日かぷっつんしてしまうのですね。
もちろん、個人では何も出来ないので、一つの「集団」となったときに力を発揮するようになります。
この「集団」は【性別や民族、言語や宗教の帰属】だったりするのですが、日本の場合だと所得になるのかもしれません。
ただし、経済的不平等以上にまずいのが「その集団に疎外感があるかないか」らしいのです。
スイスのチューリッヒ工科大学のラース・エリック・シダーマンらは水平的平等が内線にどのように関係しているのかをデータで検証した。(中略)経済的な面で水平的な平等を欠いていても、統合されずに疎外されている集団が内線を引き起こす確率は相当に高く、疎外されていない集団との比較で内戦の開始確率が大きく違ってきてしまうという計算が得られている。
こうなると、「所得」だけ原因で集団がつくられ、不平等な気持ちが募ることはないのでは、と考えてもよさそうです。
ただ、当ブログで折に触れてきましたように、日本人の悪癖ともいえる〈自己責任〉なる言葉は十分に一つの「集団」を生み出しているのではないか。
就職氷河期世代などが「自分たちは見捨てられた人間だ」と述べたとき、そこには「就職氷河期世代」という一つの連帯感をもった「集団」として浮かんできます。
すなわち、日本人の間で不平等や格差を「底辺集団」の「自己責任」として放置することは「集団」を作りかねない。
それは、内戦の火種を作ることであり、内患幇助をしているといえるでしょう。
現に「上級国民」が使われるようになったのは「上の人間に下の人間は差別されている」という差別意識が一般の人々の間に広がっているからでしょう。
政府が個人を助けたら社会主義?
日本人のよくわからない理路の一つに「政府が国民を助けることは社会主義である」という考えがあるのですが、だとしたら、「政府」は何のために存在しているのでしょうか。
もし、政府が何かをすることが「社会主義」に繋がるのだとしたら、我々は存在価値のない政府によって税金を取られ、存在価値のない国会議員とやらをわざわざ高級取りにしてやっているお人好し集団なのでしょうか?
あまりにも馬鹿すぎではありませんか。
一問一答式な問題集のやりすぎで、「政府が何かする」=「社会主義」とでも覚えているのでしょうか。
↓下記の本は社会主義やその先導者たちを讃えた内容ではない。ただ社会主義が誕生せざるを得なかった当時のヨーロッパ各国の状況を冷静に見詰めながら、日本における脊髄反射的な社会主義への忌諱を和らげるために書かれた本です。
そもそも「ブラック企業」を潰して欲しいと思っている日本人は多いでしょう。
そういった感情や怒りがある以上、当時の「社会主義」に対して同意できる部分は誰しもあるのではないか。
本書を読んで、一旦、自分の思い込みを解いてみるのは如何でしょうか。
さて、ここで冒頭の『共産党宣言』に戻ります。
『共産党宣言』は次のことをいっています。
①資本主義は世界を支配する
②プロレタリアート(労働者)は資本主義を転覆する
訳者である森田氏は解説で、次のような評価をしておられます。要約します。
多くの人は①は当たったが②は外れたといっている。
しかし、一九世紀以降の進歩的運動には常に農民や労働者による運動があり、それによって福祉国家や労働問題に於ける成果を挙げることができた。
となれば、①は言うまでもなく②も半ば実現されたのではないだろうか
実際、最近、起こった各国のデモを思い返してみましょう。
・フランスの黄色いベスト運動
・香港デモ
これらのデモは数十万人が集い、政府に対して積極的に国民の要望を伝えるモノでした。
フランスは増税への反対、香港は独裁への反対とどれも至極真っ当な国民の怒りでした。
それぞれ油断はできないものの、いちおうの成果はあげられています。
要するにデモの効果はあるのです。
翻って日本をみてみると、消費税が上げられ、自分たちの生活が苦しくなるにもかかわらず、特に反対の声もなく、トントン拍子に増税が決まりました。
その結果が上記の実質賃金の低下と下記のGDP-7.1%の減少です。
つまるところ、コロナウイルス前から消費税によって、日本の景気は悪くなっていたわけですが、安倍政権はそれを認めませんでした。
今回も「減税しろ」との声があるにもかかわらず、それに応じるかどうかはわかっていません。
というのも、「消費税によって景気が悪くなった」ことを認めるのが嫌だからです。
本日発表されましたが、
「コロナウイルスのせいで景気が悪い」という理由付けをしています。
実際は「コロナ前から悪い」のですが、すべてをコロナウイルスにおしつけてしまいました。
ここからわかることは、政府与党は自分たちの政策によって経済が悪化したことを素直に認められないのです。
平気で我々日本国民を騙し、苦しめることに何ら躊躇がない。
しかしながら、増税とコロナウイルスが猖獗を極めたときに今以上の衝撃が多くの国民に与えられるはずです。
もし日本政府がこのまま何もしなかったら……人は政治にどんな希望を抱くのか、もしくはどんな復讐を企てるのでしょうか。
私ズンダが一番怖いのは『共産党宣言』の末尾が正しく感じられるような現実が到来してしまうことです。
最後に共産主義者は総じて、あらゆる国の民主主義的党派の結合と協力を実現するために活動する。
共産主義者は自らの見解と企図を隠すことを恥とする。
共産主義者は、自己の目的があらゆる既存の社会秩序を暴力的に転覆することによってしか達成されないことを公然と表明する。
支配階級をして共産主義革命の前に戦慄せしめよ。
プロレタリアはこの革命において鉄鎖以外失うものは何もない。
彼らが獲得するのは全世界である。
万国のプロレタリア、団結せよ!
では、また、ズンダでした。
↓購入したいが高いので二の足を踏んでしまう本。宣伝を見る限り「戦争や疫病や革命などがない限り、人間は〈平等〉にならない」ことを書いているのだろう。
コロナウイルスによって与野党ともに「消費税ゼロや赤字国債発行による給付」などが喧しく叫ばれるようになった。
本来ならば、消費税を上げる前にもっと盛んにいうべきである。
つまり、人は増税よりも「疫病」であるコロナウイルスに激しく反応したということである。
そう考えると、この本の例証の一つとしてコロナウイルスは加えられるといえるだろう。