平安時代の貴族って優雅に思えませんか?
和歌を歌い、蹴鞠で遊び、豪奢の限りをつくしているような。
しかし、これは平安貴族の綺麗な一面でしかありません。
彼らも私たちと同じ人間であり、そこには綺麗なだけでは済まされない現実生活があったのです。
今回はそういった平安貴族の生活がイラスト付で詳しく解説された本『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』を紹介していくことにしましょう。
虐められていた源氏物語作者 紫式部
天皇が住んでいた殿舎の後ろには後宮がありました。
後宮は后妃や皇太后、女官などが住んでおり、女性だらけ。
当然、陰湿な虐めも発生します。
『源氏物語』の作者である紫式部は朝廷の権力者である一条天皇の中宮である道長の娘、彰子(しょうし)に女房として仕えることになりました。
女房とは宮で働く女性のことです。もともとはそこで働く女性達の住む場を「女房」(房=部屋)といっていましたが、徐々に人のことも指すようになったのです。
さて、初出仕の日、紫式部は周囲に無視されるという虐めを受けてしまいます。
そして、彼女は五ヶ月の間、出仕を拒否することに。
どうして同僚の女房達は紫式部を無視したのでしょうか?
理由は嫉妬です。
紫式部は『源氏物語』の作者であり、受領である父から漢文の教育も受けていた教養ある女性でした。
一条天皇から「日本書紀を読んでいるに違いない」といわれたことから、同僚達に「日本紀の御局」という渾名でからかわれるようになってしまいます。
紫式部は虐めをどう回避したか
しかし、紫式部も馬鹿ではありません。
同僚達の嫉視から逃れるために自分をマヌケで頓馬な人間にみせかけます。
そうすることで、彼女は宮仕えをこなしていくことができたのでした。
何時の時代も、人に嫉妬されることは恐いものですね。
持たざるモノからの怨恨感情ほど厄介なものはありません。
↓下の記事では人間関係をうまくこなすための方法と本を紹介しています。
貴族の恋愛ー顔も知らない女と結婚ー
貴族の姫君達は成人式(裳着)をすぎると、男の人たちとは顔を合わすことがなくなります。
裳着の年齢は12~14歳の十代前半。
女の人はこの年齢になると、顔を見合わせて話すことはしませんでした。
必ず、「御簾越し(みすごし)」に扇などで顔を隠しながら話をしていたのです。
更に驚くことに、平安中期になると、兄弟らとも御簾越しのやりとりになっていました。
そんな彼女らも当然、誰かと結婚するわけです。
が、自分から男性に言い寄るということはできません。
もちろん、男性も女性の顔をみることはできません。
そこで、「文通」の出番です。
手紙には必ず和歌がそえられ、和歌がうまければうまいほど、モテました。
和歌は、まともな人間だと思われるために必須の教養だったわけです。
このやり取りによって、お互いの気持ちがもありあがり、初夜を迎えます。
男性は女性宅を訪れます。
当時は招婿婚(妻問婚)ともいわれ、婿入りするのが当たり前でした。
一夫多妻の貴族社会に於いてはそれが適していたのです。
吉日の夜11頃から朝の5時まで滞在するのが普通でした。
営みを終えた後、男性は「後朝(きぬぎぬ)の文」を送ります。
この辺、男性が彼女とデートした後にLINEやメールなどで色々と気遣う文を送るのに似てますね。
これを三夜つづけることで正式な結婚となります。
しかし、相手の顔もわからないまま、文通のみでやりとりし、恋いに落ちるとはすごい習慣ですよね。
今の時代ではあまり考えにくい。
ただ、ネット恋愛などがあるように、平安貴族の恋愛と似たことは現代でも起こっているといえるのかもしれませんね。
↓平安時代の女子について書かれた本です。外人が見た古代日本人の生活振りは
今の我々からみたものと同じなのかもしれません。
婿入り婚は男にとって危険な制度だった。
平安時代にも離婚の制度はありました。
当時の法律をまとめた「大宝律令」によると、以下の通りです。
①子供がうまれないこと
②淫乱であること
③舅につかえないこと
④おしゃべりなこと
⑤盗癖があること
⑥嫉妬が激しいこと
⑦治りにくい病気を持っていること
このうち「一つでも」あてはまれば離婚することができました。
これらは夫が妻に対して離縁をたたきつける条件でした。
こうしてみると、平安時代の離婚は男性優遇にみえるのですが、前述したように「婿取り婚」であるため、舅が婿を「ダメな人間」と判断した場合、離婚させられてしまうという制度だったのです。
よって、夫は義父におべっかを使いながら、妻の家に同居しなければならないわけで、実態はかなりきびしかったといわざるを得ないでしょう。
一夫多妻制で婿取り婚の苦しみ、よくわかるのではないでしょうか。
他人の家に入って住むのってつらいですよね。
↓以前書いた記事。こちらは日本の武士の生活について詳しい。
終わりに
というわけで今日、紹介した本は『平安貴族 嫉妬と寵愛の作法』でした。
この本は平安貴族の意外な一面、それも優美な面というよりも、穏やかではない部分を中心にイラスト付で解説している本です。
受験生の方や平安貴族の疚しいところに興味のあるかたにとって、有意義な本であるといえましょう。
ではまた、お会いしましょう。
ズンダでした。
ちなみに平安貴族の物騒な話を集めたのが下記の本です。
↓は古典の裏話を漫画にした本。読みやすい。