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よりよく生きるために!実証された「性格」について考え、本当のあなたを発見してみませんか

 

 

「自分ってなんて性格が悪いんだろ」

「あの人の性格がうらやましい」

 

 そんなことを考えたことってありませんか。

 誰しもが自分や他人の性格を比較し、悩んだ経験はあるとおもいます。

 

 ところで、この「性格」とはいったい何なのでしょうか?
 
 むやみに自分を責めたり、他人を羨んだりするよりも、「性格」とは何かを一緒に理解していきましょう。

 

 また、メンタリストDaiGo氏の動画を好んでみておられる方にもこういった書物は読む価値があるといえるでしょう。

 

 性格学の入門書として読んで頂きたいところです。

 

 今回紹介する本は小塩真司『性格とは何か』(中公新書)です。

 

 

 

 

 

 そもそも「性格」ってなんですか?

 

 性格の捉え方ー類型論と特性論ー

  性格って何と考えても、漠然としてますね。

 

 学者の方々は性格をどのように考えることで、研究を進めておられるのでしょうか?

 

 私たちは人を捉える際に典型的な分類をしています。
 
 たとえば、「あの人は優しい」「あの人はきびしい」「あの人は不真面目」などいうように。

 

 こういう大雑把な分け方を「分類論」といいます。 

 

 しかし、「優しい」や「不真面目」と一口にいっても、その度合いが異なりますね。

 これだけでは性格を表すには弱い。

 

 そこで、
 こういった度合いを「低い」「中程度」「高い」と程度を意識して表現することを「特性論」といいます。

 

 引用します。

 

 特性論の考え方は、学力テストを想像してみるとわかりやすい。国語、数学、理科、社会、英語という5科目の学力テストを考えてみよう。国語は100点で得意だけれど数学は50点で苦手であるとか、社会と理科は90点で得意だけれど英語は40点で苦手であるとか、どの科目も得意ですべて80点以上であるとか、どの科目も苦手であるとか、各教科の得点をそれぞれ考えることによって、さまざまな組み合わせを細かく表現できる。

 

 

 特性論と使うことで、人の性格をだいぶ細かくみることができるわけですね。

 

 小川氏がいうように「5つの性格の要素を用意して、それぞれを5段階で表現できれば、その組み合わせは5の5乗となり、3125通りの人物を描くことができるようになる」

 

 ビッグ・ファイヴという性格診断

 

 特性論から、1980年~1990年にかけて5つの次元(ビッグ・ファイヴ)で人間の性格をあらわすことができるという研究が注目を集めました。

 

 いまだに心理学の研究者達から支持を集めています。

 

 

 

 

 では、5つの次元とはどういったものなのでしょう。

 

・外向性   活発さや明るさ
神経症傾向 ネガティヴ
・開放性   興味の強さ
・協調性   やさしさや人を許す寛大さ
・勤勉性   まじめさ 

 

 

 このビッグ・ファイヴ自体は高くても低くて問題があります。

 

 外向性が高い人は誰とでも積極的に関わろうとしたり、新しいことに挑戦しますが、それは同時にリスクを考えないで行動することも意味します。

 

 また、内向性だとしても、仕事の成果や集中力に関しては外向性を上回るという研究すらあるほどなので一概に悪いとはいえません。

 

 

 

 
 この記事では割愛しますが、近年では、ビッグファイブの他にもHEXACOモデルダークトライアドなどの性格特性も考え出されています。

 

 

サイコパス (文春新書)

サイコパス (文春新書)

 

 

 

人は、なぜ他人を許せないのか?

人は、なぜ他人を許せないのか?

 

 

 こうした、性格特性が有効なものかどうかは常に「信頼性」と「妥当性」という秤にかけられて研究されています。

 

 小川氏の言葉をかりながらまとめてみました。

 

 信頼性


 ・測定された値がどれくらい安定しているかを問題にする観点。

 時間を超えてある程度安定して測定できるのか、また用意した複数の質問項目がだいたい同じような得点を示すのかということを確かめる。(中略)たとえば外向性を測定する複数の質問項目(他の人とよく会話をしますか、人と一緒にいるのが好きですか、強い刺激を求めますか、など)に対して、ある個人がおよそ同じような回答を行うということである。
 
 妥当性


 ・本当に測りたい内容を測定できるのかを問題にする観点である。

 たとえば、ある熟語を理解できないと解くことが出来ない数学の問題があるとしよう。その場合、測定しているのは数学の能力だと言えるのだろうか。それは言葉の問題であり、数学の問題からややずれてはいないだろうか。

 戦前の数学の教科書は文語文でかかれていたりする。現在の口語文で書かれていれば解けるはずの問題が、言葉の違いで解けなくなれば、それは数学の問題としての妥当性を欠いている。

 

 

 

 何かの特性が秀でていることは、必ずしもいい結果を生むわけではない。

 

 勤勉性は仕事や長寿に大事な要素

 

 

 さて、この支持されているビッグファイブの五つの項目は、心理学の各研究でも利用されることが多いのであります。

 

 たとえばビッグファイブにある「勤勉性」が「長生き」や「浮気」などに関連しているかどうか、といった一つの目安になっているのですね。

 

 では、そういったビッグファイブが意識された研究を本書から拾っていきましょう。

 

 多くの人たちにとって関心があるのは仕事や勉強がうまくいきやすい特性でしょう。


 オーストラリアの心理学者アーサー・ポロパットやBarrick,M.R,&Mount,M.K.などの研究によると以下のことがわかっています。

 

 結論からいうと、「勤勉性」こそが学業成績や仕事の評価(人事上の評価、生産性の高さ、収入の多さ)にも関連している特性でした。

 

 一考すると大事そうにみえる外向性や協調性なども成功と関係していそうですが、実際はあまり関係性がないようです。

 

 また、アメリカの心理学者ハワード・フリードマンたちの寿命についての研究でも勤勉性は関連があることがわかっています。


 1920年代、彼らは11歳の子供達1200人に研究に参加して貰います。
 1986年までそのうち、約6割がまだ生存していました。

 そこでも「勤勉性」の高い子供たちほど長生きだったのです。

 

 理由としては

・過度な飲酒をしない
・違法な薬物をしようしない
・不健康な食生活を避ける
・危険な運転行為をしない
・危険な性交渉をしない
・喫煙率は低い
・暴力行為が少ない

 

 

 ということが挙げられています。

 自分自身を抑制するような生活スタイルこそが彼らの長寿に関係していたのです。

 

 性格特性は変えられる

 

 では、勤勉性を身につけるようにすれば、私たちは幸せになれるかというと、それは難しい。

 

 というのも勤勉性が高い人は自然にそういった抑制行動をとれるのであって、無理をしているわけではないからです。

 

 

 勤勉性はこの本に書いてある調査の中でもおよそ「善い人生」をおくろうとおもうと多くの点で有効であることがわかります。
 

 読者諸子には「でも、勤勉じゃないよ」という人もいらっしゃるでしょう。

 

 もし、長生きしたいとか浮気したくないとかであれば、勤勉性を好む性格に自身を変える必要があります。
 
 そして性格を変えることができるかという実験はすでに行われています。

 

 Hudson,N.W.,Briley,D.A,Chopik,&Derringer,J.らによる研究です。

 小塩氏の説明をまとめてみました。
 
 

 自分が変えたいと思う性格特性を指定し、変えたい方向も考えます。

 「外向性を高くする」だったり「神経症傾向を低くする」だったりと。

 外向性を高めたいのであれば、お店の店員と必ず話したり、他人のために扉やエレベーターのドアをあけてあげます。

 

 これを続けて予定通りに実行できたら、更に難しめのことに挑戦します。

 

 授業中に手を挙げて発言したり、何かしらかのイベントを開催したりといったことをです。

 

 さて、毎週二つの挑戦をクリアした学生は三ヶ月後には性格特性の得点が変化しました。

 

 ただし、表面的にこなしただけの学生はたいして変化しませんでした。
 
 その人が心の底から、その性格特性を変えたいと願わないかぎりは変化はしないものなのです。

 

 特性は環境や複合的な状態によって悪影響も与える

 

 

 ちなみに勤勉性が高い人が必ずしもいいわけではありません。

 というのも性格特性は複合的に影響しあうからです。

 

 勤勉性と神経症傾向が高い人がいたとしましょう。

 

 そういう人は所謂「完璧主義」になりやすいのです。

*1

 

 

 

 

 

 なぜかというと、勤勉性ゆえに目標を明確に定め、邁進します。
 高い目標を達成しようとし、それに至らない場合、すべてが失敗だと考えるようになります。

 

 すると、神経症傾向が強いので、強烈な落ち込みや抑うつ、自己嫌悪に陥ってしまうのです。

 

 このように長生きや仕事での成功をもたらす「勤勉性」ですら、他の性格特性との兼ね合いや環境によっては、個人を苦しめる元兇となりかねないことには注意がいります。

 

 ↓逆に性格なんて変えたくない。今のままの自分でも人生を生きていきたい。自分を認めてあげたい、という人向けの本。性格を変えることが正解なわけではない。

「変えるという選択肢もあるよ」と思えば良い。

 

 

 あなたは自分の性格を知った方がよい

 

 ここに「なぜ、性格を知る必要があるのか」という答えがあります。

 

 私たちには遺伝や環境によって、性格が形づくられていきます。

 それは青年期の激しい変化を終えた後も緩やかになりながら安定していくいわれています。(「疾風怒濤の時代」→「成熟の原則」→「累積的な一貫性の原則」)

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本書より。年齢による特性の変化の度合いをあらわしたもの。

 

 

 こうして自分たちが社会で生きてくために順応できるような居場所を見つけたり作ったりしていくわけです。

 

 「今、何の特性を伸ばしたり、あるいは抑えたりすれば、自分は満足できるだろうか」を理解しておくために自身の性格を知ることが大事なのです。
 
 小川氏の言を引きます。

 

 私たちが自分の性格について知るメリットは、自分にとって居心地のいい場所がどこであるかを理解し、その居心地のいい環境を自分自身で作りだすことにつながる点にある。(中略)自分が「こうありたい」という目標を達成するために、いかに自分自身を目標に向かわせつつ居心地のいい環境に置くか、工夫していくヒントを得るところに、自分の性格を知る意義がある。

 

 

 終わりに

 

 今回はこの本の「序章」「第五章」「終章」を中心にまとめてみました。

 このほかにも「国民性・県民性は存在するのか」「人々はどんどん賢く、ネガティブになっている?」「男性と女性は何が同じで何が違うのか」などといった興味深い章もあります。

 

 

 

zunnda.hatenablog.com

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 興味のある方はぜひお読みになるとよいでしょう。

 

 では、またお会いしましょう。
 ズンダでした。

 

 

 次回は春木育美『韓国社会の現在 超少子化、貧困・孤立化、デジタル化』(中公新書)を紹介します。 
 

 

 

 

*1:※完璧主義は英語のperfectionismの日本語訳として世間でよく使われている。

 しかし、小川氏は「完璧」という言葉が中国の古典に来歴があり、〈立派〉という意味も含んでいる。

 perfectionismという言葉は、完全を目指すせいでよくない結果が待ち受けているという意味があるので、用語の訳としては「完全主義」のほうがよいでのはないか、と提言している。