お隣の国、韓国って気になりませんか?
BTS TWICE BLACKPINKなどの有名アイドルたちの活躍*1
SAMSUNG電子を代表とする大企業の数々。
はたまた、熾烈な受験競争等々。
有名企業に入社できる人もいれば、落伍者になってしまいチキン屋を始める人もいる。
近頃では「ヘル(=地獄)朝鮮」と若者が自称するほどに悲惨な状態になった韓国。
この国について知りたい方に、おすすめの本があります。
春木育美『韓国社会の現在』(中公新書)です。
今回は我々日本人にとっても馴染みのある“韓国の教育"についてみていきましょう。
日本と韓国の学歴
大学進学率
まず韓国人の学歴はどんなものなのか。
まとめてみましょう。
大卒の若年層(25~34歳)
韓国 70%
日本 60%
OECD平均 44・3%
OECD加盟国の平均と比べてみると、日本も韓国も大卒の人たちが多いことがよくわかりますね。
どちらも高学歴社会といえます。
四年制大学進学率
韓国 50%
日本 53・7%
男子 65・9%
女子 73.8%
四年生の大学進学率に関しては殆ど変わりが無いようです。
ただし韓国では女子のほうが大学進学率が高いというのは驚きですね。
日本では四年制大学に限ると一回も男子を上回ったことはありません。
博士課程取得者 人口百万人あたり
韓国 271人
日本 118人
大学院へ進学して博士号を取得している
人たちは上記のような結果でした。
日米英独仏中韓の七カ国のうち日本は6位です。
そのため日本は先進国の中では「低学歴国家」といわれています。
大学院へいかないからです。
韓国は3位であり、産業界も博士号取得者を求めています。
日本と違う点。韓国の場合、女も大学へ行かせたい
日本と韓国とで大きな違いは子供の学歴に対してです。
日本の「4年生大学卒業以上」を期待する割合(学研教育総合研究所)
男児 78.9%
女児 69.5%
日本の親は娘に対して大学卒業を望んでいる人が、息子と比べると減ります。
中韓ではこの差はありません。
また、日本では所得によって、「どの段階の学校まで進んで欲しいか」という設問に対する答に差があります。
所得上位層は80%と下位層は30%と50ポイントもの差があります。
韓国ではどの層も大学までいってほしいと思っているようです。
こういう情報からすると、どうも韓国の親のほうが教育熱心だという感じがしますね。
学歴の割に就職率が低すぎる韓国ー30まで無職がザラにいるー
では、肝心の就業率はどうなのでしょうか。
25~34歳人口の韓国の就業率は次のようになっております。
大卒 75%(84%)
高卒 65%(77%)
括弧内はOECD加盟国35カ国の平均です。
韓国はギリシャ、イタリアに次いで三番目に若者の就業率が低い国なのです。
これを裏付けるデータとして、韓国の大卒新入社員の平均年齢は男性30・9歳でした。
なんと韓国人の大卒の多くは30歳になるまで、無職なのです。
その上、退職時の平均年齢は大企業でも52歳なので、わずか20年程しか就業できないことになります。
こういったことから、韓国では男性の大学進学率が下がってきています。
彼らは、費用対効果が望めない大学進学を望まないようになりました。
韓国のエリート教育と受験競争の弊
エリートたちを育てる国家
韓国も日本と同じく天然資源に乏しい国なので、人的資本を大切にしています。
彼らの国のエリート教育の実態をみていくことにしましょう。
韓国は「早期英才教育」と「選択と集中」が人材育成の基本方針となっています。
科学技術分野の人材育成頼めに国公立20校の科学高校とよばれるものがあります。
しかし、同時に、政府は「平等」「公平」を重視しているので1974年に高校標準化制度を導入しました。
これは一部の地域を除いて高校入試を廃し、名門高校を一気に解体するという制度です。
格差を取り除くために上位高校を分解したのですね。
学区内にある高校に皆が進学できるようにしました。
中間層の学力にあわせた学習指導に変わりました。
しかし今度はトップレベルの生徒の意欲減退や学力低下が問題になります。
身分が固定化された社会と教育との関係
この辺りはほんとうに匙加減が難しいですよね。
以前紹介した本があります。
エマニュエル・トッド氏による『大分断』です。
この本には上流階級と下流による教育の格差によって、フランスでは生まれた段階からすでに道程が定まっていることが指摘されています。
固定化された社会では、上流階級である政治家や官僚は下々の人間の気持ちや経済状態について理解を示すことができず、民主主義国家が崩壊していく、と彼は警告をならしていました。
韓国もそういった事態を避けたいために「平等」や「公正」などを意識していたのでしょう。
ちなみに、この中でピエール・ブルデューという社会学者の〈再生産〉という概念が非常に重要なのです。
最近、ブルデューに教えを受けた夫妻ミシェル・パンソンとモニク・パンソン=シャルロが原案の漫画が出ました。
分かりやすい本なので、購入して、階級の再生産というブルデューの考えにふれてみてください。
子供への期待が教育虐待を招く
さて、「平等」への反省から2000年には「英才教育振興法」を制定し、エリート教育をさらに強化した科学英才高校を6校、新設しました。
英才教育にかかる費用はすべて無料で、税金による負担です。
中学校1年生から受験可能であり、高度な専門教育を受けることになります。
ところが、こういった短期集中的な英才教育プログラムにはつきものの「プレッシャーによる精神崩壊」が問題になっています。
自殺した韓国の生徒会長
一例をあげましょう。
ソウルの科学高校で生徒会長を務めていた優秀な人物が投身自殺をはかりました。
自殺理由は韓国技術科学院(KAIST=Korea Advanced Institute of Science Technology)への飛び級進学に失敗したことでした。
その高校の約半数は飛び級でここへ進学していたのです。
KAISTとは国立のエリート科学大学です。
全国から0.1%の秀才をあつめ、猛烈な競争をさせて鍛え上げています。
サムスン電子などの役員はこのKAIST出身の人が多いのだとか。
生徒会長まで務めていた人物が飛び級に失敗し、挙げ句の果てには自死を選んでしまう。
悲話ですね。
ただ、そんな優秀な人たちだらけが切磋琢磨して競い合っているわけですから、重圧にたえきれずに死を選ぶ人がいてもおかしくないのかもしれません。
実際、大企業に入れないのであれば、まともな就職先がない韓国です。
自分の未来に絶望し、死ぬという選択肢も社会の構図としてあり得るのです。
SKYキャッスルというドラマ
2018年、韓国で話題になったドラマの一つに『SKYキャッスル』があります。
このドラマは「富裕層の歪んだ教育観を浮き彫りにするとともに、受験を突破するために採られる手法に、明白な階級差があることを露呈させたドラマ」だそうです。
ドラマの内容を掻い摘まんで示してみましょう。
裕福な専業主婦ソジンは娘をソウル大学校の医学部に合格させるために、大学合格を請け負う入試コーディネーターを数億ウォンの成功報酬で雇う。
コーディネーターは内申書の成績を上げるために学校の教員を買収し、試験問題を前もって入手。
予想問題と称し娘を特訓し、学年トップの成績を収めさせた。
この買収の話は実際に起きた事件に基づいているそうです。
教務部長を務めている父親が、同じ学校に通う双子の娘に試験問題と解答を事前に教えて、逮捕されています。
その後の調査で、全国の高校23.7パーセントで親子が教員と生徒として同じ学校に在籍中であることが判明しており、氷山の一角と推測されています。
こういった苛烈な受験競争は「教育虐待」(=親が子供に厳しく勉強をさせて、自由を奪うこと)といわれており、自殺や引きこもりになってしまうことも珍しくないそうです。
一生懸命、国民の教育をしてるけれども
しかしこれだけ選抜した教育をしているにもかかわらず、韓国はパッとしません。
GDPに対する研究開発予算の割合はOECD加盟国のなかで一位、研究開発投資額では四位。
論文評価や引用数、企業活動評価では下位圏にあります。
なぜこれだけの投資をしておきながら、ウダツのあがらない状態になっているのでしょうか。
氏が指摘するには次の理由のようです。
5年スパンで大統領が替わるので重点研究分野もかわる。
大統領の任期が1期五年で再選できないため任期中の業績作りをいそぐからです。
韓国では5~10年をかけた長期研究がないようなのです。
そういう研究があっても、1年単位で課題達成率が100%に達しなければ不利益をうけるため、挑戦的な研究ができない構造になっているようです。
終わりに
というわけで今回は『韓国社会の現在』を紹介してみました。
ほぼ全編にわたって絶望的な内容です。
各章の題だけをみてみても、
「世界で突出する少子化」
「貧困化、孤立化、ひとりの時代の到来」
「デジタル先進国の明暗」
「国民総高学歴社会の憂鬱」
「韓国女性のいま」
「絶望的な格差と社会」
となっており、どの頁を読んでも「韓国は終わってる」と思わざるを得ないような内容ばかりです。
この本は、書店でよくみかける「反韓本」(=韓国を叩いて溜飲を下げる内容の本)とは異なります。
しかし、書かれている内容はあまりにも深刻で酸鼻を極めたものです。
こんな状態が続いて、この国は将来、残っているのだろうか?と思わざるを得ません。
希望は何一つとしてなく、問題尽くめの社会です。
ありとあらゆる政策が空回りし、一向に好転する可能性が感じられない社会が描かれています。
では、何処が反韓本と異なるのでしょうか。
それは、日本との比較です。
春木氏のこの本は常に「日本と韓国」とを照らし合わせて書かれております。
韓国と日本は一定程度、同様の悩みを抱えているのです。
少子化であったり格差であったり、孤立化であったり。
どれも日本と似ています。
違うのは程度の差だけです。
この点について、以前、当ブログでも紹介した本があります。
菊地氏の本です。
今回紹介した春木育美『韓国社会の現在』を読んだ上で、菊池氏の『新自由主義の自滅』を読むと、どうして日本と韓国は同様の問題を抱えているのかについて気づかされることでしょう。
これが新自由主義政策を進めていった国の末路だということに。
ぜひとも下記に紹介した本をセットに読み進めてください。
韓国の問題は韓国だけで終わらず、日本の問題でもあるということがみえてくることでしょう。
我々は韓国の失敗を他山の石としなければなりません。
↓大変、重い内容です。私ズンダは読んでいて暗澹たる気持ちになりました。
普通は「いいところもある。希望はまだある」という一節があるのですが、この本にはそういう生やさしいところがありません。
↓菊池氏の本です。日本、アメリカ、韓国に共通している問題を剔抉した本です。
↓こちらの書物もおすすめです。韓国で起こっている数々の問題はそもそも韓国人の気質だとか能力だとかではなく、政策によるものではないかと考えられるようになるでしょう。
↓ちなみに、新自由主義についてはこちらをどうぞ。
日本において、菅政権が誕生しました。彼も新自由主義的な構造改革の流れを引き継ぐといわれています。
いってしまえば、日本の韓国化がどんどんすすんでいくということです。
最低賃金の引き上げを提言するアトキンソン氏の教えを引き継いでいるといwれています。
↓三橋貴明氏による菅氏が行おうとしている政策の解説です。
まさに、日本の韓国化といってもよいでしょう。
さて、
日本はこの数十年間、ずっと改革だけやっているのですが、これが我々日本人にとっての最大の蠧毒でした。
↓その弊害について知りたい方は以下の書物をどうぞ。
*1:
ちなみに、韓国のアイドルなどは世界で大活躍していますが、それに関してもちゃんとした理由があります。
本書より引用します。
2019年現在、111校の4年生大学、58校の専門大学、合計169校もの大学に演劇映画学科が設置されている(教育省「教育統計主要指数」2019年)。4年制の一般大学だけでも約6割に、演劇映画学科があるのだ。韓国の俳優の演技力や演劇のレベルの高さは、大学で演技の専門教育を受けた人材の層の厚さが背景にある。
なんと、大学の6割に演劇を学べる学科があるというのです。
世界を魅了する人々を輩出できる理由の一端はここにあったのですね。