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読書好きな管理人ズンダが古典、小説、批評文、経済、実用書を中心に紹介するブログです。読書好きな皆さんと繋がりたいとおもいます。

【新書 感想】GAFAに代表されるお金持ちースーパーリッチーは私たちにとってどんな存在なのか

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サムネ

 


 世の中にはとんでもない大金持ちがいることを知っていますか。
 Amazonのジェフ・ペゾス、Facebookマーク・ザッカーバーグ、アリババのジャック・マー等々。

 彼らの富はとてつもないことになっています。

 今世界中で貧富の格差が広がっています。


 2017年時点で所得上位一〇%の世帯がにぎる所得のシェアは全体の五〇%を超え、大恐慌前の水準を上回っています。

 

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本書P10 上位十%の人の所得の割合

 

 更に上位一%の所得シェアは八十二年には一〇パーセント程度だったのが、二〇一七年には二二パーセントに達しています。

 

 彼らの富は凄まじい勢いで増大しています。 

 これは各国の政策による富裕層を優遇する政策がとられてきたためです。

 

 

 では今回はグローバル社会の富裕層とその影響による「新格差社会」についてみていきましょう。

 今回紹介する本は
 太田康夫『スーパーリッチー世界を支配する新勢力』(ちくま新書)です。

 

 

 

 まず、スーパーリッチとは何なのか。

 

 ビリオネア 一〇億ドル以上の所有者
 ミリオネア 一〇〇万ドル以上の所有者 

 

 彼らのことを総じてスーパーリッチとよびます。
 
 昔はミリオネアが富裕層の呼び名でしたが、ここ数十年で一〇億ドルの資産をもつ人々が急増したので、ビリオネアという言葉が使われるようになりました。

 

 世界のビリオネアについての図表をみてみましょう。

 

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本書23P 世界のビリオネアランキング

 

 

 なぜビリオネアは増えたかー株価上昇

 

 富豪は事業を起こしたり親の箕裘を継いだりした人々が多い。
 
 彼らはその会社の株式を所有していまして、その保有株の評価額が凄まじい額になっています。
 
 引用します。

 

 例えば、一九八九年に世界で最も株式時価総額が大きかった企業は日本のNTTで、一六〇〇億ドルだった。二位から五位までは邦銀で、日本以外では六〇〇億ドル強のIBMの六位が、最高だった。
 それが一九九七年にはトップが米国のゼネラル・エレクトリックの二四〇〇億ドルで、NTTは五位まで後退している。(中略)直近(二〇二〇年八月半ば)で世界最大の企業は、再び評価が高まったアップルの二兆一〇〇〇億ドル。

 世界トップ企業の株式時価総額は三〇年のあいだに一〇倍以上にも膨れ上がった。(太字ズンダ)

 

 

 と書いてあるように、株価の上昇が富裕層を更に富裕へと引き揚げていったのです。

 

 

米国 614人
中国 389人
独逸 107人 

 

 

 これだけのビリオネアがいます。
 ちなみに日本は26人で世界の国々で一七位に位置しています。

 ITなどの最先端分野の企業が育っていな
いためといわれています。

 

 なぜ格差は拡大しているのか

 

 以前、売れに売れた経済書トマ・ピケティ『21世紀の資本』(みすず書房)で、ピケティは「大企業の重役たちがすさまじく高額の補修を受けることが大きい」といっており、彼らを「スーパー経営者」とよんでいます。

 彼は「資本収益率」の話をし、裕福であればあるほど多額のお金を稼ぐことができ、事業者は不労所得生活者になれてしまいます。
 

 株式などの運用による収益と一般労働者の労働による収益との差が大きいためですね。

 これが格差がひらいていく理由の一つなのです。

 

21世紀の資本

21世紀の資本

 

 

 ミリオネアの増加

 
 さて、問題なのはビリオネアの増加だけではありません。
 
 小金持ち(といっても、だいぶ金持ちなのだが)であるミリオネア層の更張も見逃すことができません。
 
 ミリオネアとは金融資産が10万ドル以上の富裕層を指します。

 

一九九六年 四五〇万人 一六兆六〇〇〇万ドル
 
二〇一八年 一八〇〇万人 六八兆ドル

 

 

 更に不動産も含めた資産(不動産など非金融資産を含む資産額から負債を差し引いたベース)で一〇〇万ドルを超える富裕層をみてみると、

 

二〇〇〇年 一三八八万人 三九兆ドル
二〇一九年 四七〇〇万人 一五八兆ドル

 

 

 になっており、増大の一途をたどっていることがわかりますね。

 ここでも米国が拡大の主要因になっています。

 

二〇〇〇年 七四四万人
二〇一九年 一八一六万人

 

 

 二十年でミリオネアが約一千万人も増えているのです。

 これがアメリカにおける一%VS九九パーセントの内実だといえましょう。

 資産を顕著に増やしている人々がアメリカにはいるわけです。
 
 さて世界に四七〇〇万人もミリオネアが誕生しており、彼らはすでに一つの層になっています。

 

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本書 P55 富のピラミッド

 金で政治を買える

 

 世界人口に占める比率は0.9%にすぎない彼らが世界の富の43.9%に当たる一五八兆ドルを保有しているわけです。

 

 ビリオネアに至っては二〇〇〇人いて、八兆ドルの富を保有しています。

 一万ドル以下の人たちは二八億人にて、富が六兆ドルしかないことを考えれば、
どれだけ凄まじい差があるのか、誰の目にも明らかだと言えるでしょう。

 

 たった二〇〇〇人が二八億人を上まわっているのですから!

 

 そんな彼らが国の政治に与える影響も当然、看過できないものになっています。

 

 新格差社会の到来ースーパーリッチが政治に関与し、民主主義が機能しなくなる

 

 近代以前に戻りつつある世界

 

 大金持ちが支配する政治の形式はプルトクラシー(plutocracy)とよばれています。
 古代ギリシャフランス革命以前のフランス、中世のフィレンツェなどがそうでした。

 

 ↓民主主義の歴史と変遷とを書いた本。古代ギリシャから現代までを描き、民主主義の危機や通患を浮かび上がらせている。*1

民主主義とは何か (講談社現代新書)

民主主義とは何か (講談社現代新書)

 

 

 

 金持ちが政策に与える影響とは

 

 現在、アメリカに於いて問題視されているのは金持ち集団による利益誘導です。

 

 つまり、金満家が政治家に献金することで、自分たちにとって利益のある法案を通らせようという企みが事実としてあります。
 

 経済学者のブルノ・ウイルヘルム・スペック「政治におけるマネー:政府における健全な政治的競争と信用」では以下のことがいわれています。

 

 選挙キャンペーンの寄付は、企業が集まった特定の利益グループが政府や議員に影響を及ぼす一つの経路になっている。それはロビーイング、ビジネスと政治の個人的ネットワーク、さらには賄賂などほかの経路も含む広い支店でとらえる必要がある」 

 

 利益集団が政治家に直接働きかける運動をロビーイングといいます。
 これを彼らは積極的に行っているわけです。

 

 更には米国のバイパルティザン・ポリシー・センターが二〇一八年に発表した「米国の「選挙キャンペーン・ファイナンス:抜本的変革の時代」で次のようにかかれています。

 

 「選挙ファイナンスの仕組みは一九七三年の連邦選挙キャンペーン・アクトによって規制されたが、その後の変更、とりわけ特別政治活動委員会スーパーPACーpolitical action committee)によって内容は大きく代わった。議会による規制権限が弱められ、候補者、政党、企業や組合を含むそのほかの関係者のキャンペーンへの無制限の支出が可能になった」と指摘、金がものをいう状況になっていることを示している。

 

 

 またドイツ社会科学研究所も「人民の、エリートによる、富裕層のための政府」という論文を発表しています。

 

 ここでは一九八〇年から二〇一三年までの政策決定と富裕層の意見には注目すべき関連性があると指摘されており、米国と異なり、公的なファンドによって選挙が支えられているドイツでさえ富裕層の影響下におかれていることがわかります。

 

 この他にも高額な授業料のため大学へローンなしでいけるのが富裕層の子弟だけであったり、タックス・ヘイブンによる租税回避などが横行していたりして、彼らへの抗議活動は盛んになりつつあります。

 

 超格差大国・アメリカの不都合な真実 

http://www.nihonkosoforum.org/img/npitoukan1.pdf

アメリカで政治・金融腐敗が進む理由とは

http://www.nihonkosoforum.org/img/npitoukan2.pdf

 

 ウォール街選挙運動、イエローベスト運動

 

 二〇一一年のウォール街を選挙せよ」という抗議活動や二〇一八年の「イエローベスト運動」は大変有名ですね。

 

 前者は政府による金融機関救済や富裕層へ優遇措置などに反抗したデモです。

 後者はマクロンが行おうとしている構造改革ー 一般社会税(社会保障財源)の引き揚げや富裕税の減税、キャピタルゲイン減税(株式や債券など保有資産の価格上昇から生じる利得のこと)などへの反抗でした。

 

 

 コロナ後に世界は変わるのか

 

 新型コロナがもたらした影響は「一部の企業に株主を取るか従業員を取るかの選択を迫り、富裕層に手厚い株式文化の在り方が問われる事態となった」と太田氏は述べておられます。

 

 たとえば欧州中央銀行は二〇二〇年三月二十七日、銀行尾に配当支払いと自社株買いを先送りするように要請しています。

 引用します。

 

 ECBは「銀行は新型コロナウィルス危機時において、家計、中小企業、企業に対する役割を果たすため、資本を節約し、実体経済を支える力を維持する必要がある。それはら、配当や自社株買いに優先する」と強調した。 

 

 

 というふうに株主優先ではなく、中小企業や家計などへの支援を優先するように命じたわけです。

 また富裕層自身も自分たちへ課税せよ、という趣旨の声明を発表しています。

 

 引用します。

 

 二〇二〇年七月に米ディズニー創業者一族(共同創業者ロイ・ディズニーの孫)のアビゲイル・ディズニーなど先進国の八〇人を超える富豪で構成する「ミリオネアズ・フォー・ヒューマニティ」が、「新型コロナウィルス感染が広がる中、ミリオネアには果たすべき役割がある。我々は患者の処置に当たるわけではないが、(中略)お金がある」としたうえで、政府がミリオネアに大幅課税することを訴えた。

 

 コロナを発途にこの経済格差は更に広がりを見せるとともに、その問題を是正しなければならないという動きも高まっていくことでしょう。
 
 果たして、世界はこの数十年間続いてきた「富めるものがより富む時代」から脱却できるのでしょうか。

 いや、もしこの弊竇を解決出来ない場合、血塗られた歴史が再び繰り返される可能性があります。

 

 著者は巻末に次のように書いています。

 

 不満が高まれば、富裕層に格差是正の矛先が向くのは間違いない。(中略)それが平和裏に起きるのか、暴力的なのか、経済の大混乱を伴うのか、わからないが、変革への機運は確実に強まっている。

 ↓戦争や革命などにより、金持ちと貧乏人との格差は是正される。

平和が続くと格差は再び増大する。

 そんな人類の悲しい歴史を縷析した本。

 

 

 終わりに

 

 今回紹介した本はいかがだったでしょうか。

 私が記した以外にも「新貴族文化」や「女性のビリオネア」や「ミレニアル世代の金持ち」などが取り上げられています。
 
 富裕層たちがますます勢力を伸ばし、冨を牛耳るために政府へロビーイング活動を行っている今、私たち一般人は彼らとどのように付き合っていけば良いのかを真面目に考えていく必要があるでしょう。

 これは「金持ちへの嫉妬」という問題ではありません。
 
 ビリオネアやミリオネアの力によって、プルトクラシーになりつつある政治が問題なのです。

 私たち一般人が選挙によって政治家を選び、彼らが私たちのために政治をする。

 それが成り立たなくなっている現状がこの本には描かれているのです。

 

 

 

 

 

 


 
 では、またお会いしましょう。
 ズンダでした。

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*1:この本に書いてある一節を紹介する。

どの政治的支配も「私的利益」に基づけば堕落することをアリストテレスは述べていた。

現代においてはどうだろうか。

 

 アリストテレスは、政治的支配について、一人の支配、少数の支配、多数の支配に応じて君主政、貴族政、民主政を区別しましたが、興味深いのは、それぞれについて堕落形態があると論じていることです。

 すなわち、僭主政、 寡 頭 政、衆愚政です(より正確には、アリストテレスは、良き多数者支配をポリテイアと呼び、デモクラティアを否定的な意味で用いています)。

 いずれの堕落も、統治にあたる人間が公共の利益ではなく、私的利益に突き動かされることによって生じるとアリストテレスは考えました。