お久しぶりです。
ズンダです。
今回紹介する本は『最強脳―『スマホ脳』ハンセン先生の特別授業―』(新潮新書)です。
この本の著者アンデシュ・ハンセンは前回『スマホ脳』で「スマホが人間の脳を劣化させる」と主張し、発行部数が50万部に至るほど売れた新書界の寵児です。
前書でスマホの危険性を訴えた彼は、今回の本で「どうすればスマホ脳にならずに済むのか」を解説しています。
それがどういったものなのか軽く見ていくことにしましょう。
運動がすべてを解決する
体を動かすことの大切さ
ありがたいことに、スマホ脳脱却の答えは最初の段階で示されています。
実は、この本の結論は一言で言えてしまいます。 運動をしよう──そうすれば脳は確実に強くなる。 多くの人が驚くと思いますが、脳にとっていちばん良いエクササイズはクロスワードパズルでも、ナンプレでも、あなたのスマホのアプリでもありません。体を動かすエクササイズなのです。(赤字はズンダ)
いや、なんというありがちな答え。
あまりに簡単すぎるのでずっこけてしまいそうになりますが、通俗的な健康本や養生訓にかいてあるのと変わりません。
なんと、運動が脳味噌が活発化し、スマホの弊害から解き放ってくれるというのです。
いったいどういう理由なのでしょうか。
ゲームやスマホ脳に共通するドーパミン-脳ミソにとって負荷が高い現代-
まず、私たちがスマートフォンをみているときに何が起こっているのかを確認してみましょう。
脳には「ごほうび」をくれるシステム(仕組み)があります。 細胞と細胞の間でシグナルを送るための化学物質が何種類かあり、そのひとつが「ドーパミン」です。(中略)ドーパミンの仕事のひとつに、「何に注目し、集中すればいいのかを教えてくれる」というものがあります。好きなことをすると、例えばおいしい物を食べたり、友達と会ったりすると、ドーパミンの量が増えて幸せな気分になり、満足を感じます。
つまり自分にとって良いことをすると、脳が「ごほうび」をくれるのです。人間は食べなければ死んでしまいます。だから脳は、私たちが何かを食べる度にごほうび、つまりドーパミンを出してくれます。他の例もあげておくと、人類の歴史において、他の人たちと仲良く出来るかどうかは、生死を分けるような大切なことでした。だから人と仲良くしている時もドーパミンが出ます。
というように、私たちは脳ミソから「ドーパミン」が放出されることで、喜びを得ます。
ドーパミンは期待感を生むホルモンで、これに取り憑かれるとドーパミン欲しさに常に刺激を求めるようになってしまいます。
覚醒剤や大麻などがそうですし、著者が指摘していた「スマホ脳」もそうです。
私たちはTwitterで「イイネ」を貰うたびにドーパミンが出ます。
SNSは人間のドーパミン欲を過剰に引き出してしまう魔物であり、私たちがネットに耽ってしまう理由は正にドーパミン付けになっているからなのです。
上の記事にあるように、こうしたSNSの弊害は思春期の敏感な子供たちに痛烈な痛みを与えています。
彼らがSNSから与えられる影響が米議会では問題になっているのです。
子供がSNS中毒になりやすい理由とは何か?
この記事を読んでいる人の中には十代の人もいるかもしれません。
その人たちの中には先生や親から、「あまりゲームをするな。スマホばっかりやるな」といわれた経験があるでしょう。
大人たちに反感を覚える人たちも大勢いるのは容易に想像がつきます。
ですが、若い人たちを制限するにはちゃんとした理由があります。
いってしまうと、脳の成長段階にあるからです。
人間の脳は25歳まで成長するといわれています。
有名な理性を司る前頭前野は25歳あたりまで発達します。
ところがドーパミンを得る報酬は十代の時点で完成しています。
つまり、十代の若者はドーパミンを抑えつけるだけの前頭前野が育っていない状態で
快楽の強いゲームやSNSにのめり込んでしまうことになります。
彼らはドーパミンへの欲求を抑えるだけの力がないのです。
というわけで、脳の成長に照らしていえば、親や先生などが子供に禁ずるものが多い理由がはっきりします。*1
運動によるドーパミンの量はスマホを超える
では、どうして運動はこうした中毒症状に有効なのでしょうか?
ハンセン氏は次のようにいっています。
運動(しっかり体を動かす運動)をした後にはドーパミンが出ます。ドーパミン以外にも、幸せを感じるエンドルフィンが出ます。エンドルフィンには痛み止めの作用もあるので、運動した後に出るのは好都合と言えます。ここで言っておきたいのは、 運動の後にもらえるドーパミンの方が、スマホからもらえるよりずっと量が多い ということです。「ごほうび」をもらえるようになるには、ある程度の期間、運動を続けなければいけませんが、そのおかげで筋肉や肺や心臓も強くなります。
そうです。
運動はスマホで得られるドーパミンよりも更に多く与えてくれるのです。
この理由として、狩猟採集をしていた頃の人類は動かなければ生きていけなかったことがあげられています。
動くことでドーパミンが出るからこそ、人々は積極的に狩りに出向いたわけです。
どんな運動をすればいいのか-脈拍をあげよ-
毎回最低30分、出来ればもっと長く、週に2、3回、運動を。
有酸素運動が効果的です。つまり、長い間心臓がドキドキしているような運動です。
本書で勧められている運動は、脈拍があがるものです。
人は緊張したり激しい運動したりすると、コルチゾールというストレスホルモンが出ます。
このホルモンは、私たちに警戒心や注意力の向上を促し、身辺に異常がないかを意識させます。
もちろん、常時出ていればストレスによって精神が病んでしまいますが、適度な刺激であればストレスに強い体を手に入れることができるといわれています。
要するにストレスに対する許容量が上がるわけです。
更には前頭葉の機能が強化されるともいわれています。
すなわち、ドーパミンを得るための欲望を抑える力が増加し、中毒に陥りづらくなるわけですね。
こういうわけで、この本では運動が推奨されているのです。
終わりに
ハンセン氏による最新刊はいかがだったでしょうか。
この本は非常に読みやすく、通読するのに一時間もかからないと思います。
子供たちがスマホ脳になりやすい今、どうすればいいのかを考えるのは須要のことといえましょう。
私たち大人もインターネットやスマホに釘付けになっていることを思えば、問題は児童に限ったことではありませんね。
脳の成長と運動との関係を考えながら、この手の本をうまく利用し、健やかな生活を送りたいものです。
では、またお会いしましょう。
ズンダでした。