はあ、きょうも会社か。無駄な会議や上司の小言、嫌いな同僚、うまくいかない営業。つらい、苦しい。
そんな悩みをかかえておられるかたが殆どな世の中。
酒場や蕎麦屋で愚痴っている人たちをよくみかけます。
所詮、この世は人間関係。人間関係がうまくいけば万事解決!とまではいかなくとも「まあまあ満足だなっ」と思えることでしょう。
さて、今回紹介する本はあなたの人間関係を劇的に解決するためのやり方、そしてそれを教えてくれるのは元FBI捜査官 ジャック・ジェーファー氏です。
彼が書いた本『元FBI捜査官が教える「心を支配する」方法』(だいわ文庫)から一部のテクニックを紹介しましょう。
こういった人間関係を改善するための本はいっぱい本屋には並んでいます。
中には非常に出来が悪く、文字数が少ないのに一五〇〇円ぐらいしたりする本もあったりして、お金を無駄にしたと思うことも頻りにあります。
しかし、この本は
①文庫本なので安い
②約290頁あり、情報量が多い
という隙のない出来になっております。
では、中身をみてみましょう!
『上司をムッとさせる「注意フレーズ』
あなたが大手の化学会社ではたらいています。コストを下げるための劃期的(かっきてき)な製造法をみつけました。
それを上司に提案したい。
そのとき、どんなふうに相手を説得しますか?
次の二択から正しいと思うものをえらんでみてください。
①私は新しい製造法をみつけました。あなたがたは間違った方法で作っていたんですよ!
②お忙しいところ失礼いたします。実はわが社にもっと利益をもたらす方策を発見しました。アドバイスを頂戴したいと思いまして。
どちらを選びましたか?
人間関係を拗らせない正しい答えは②です。
殆どの人が当たったと思います。
というのも②のほうが読んでいて、相手を尊重した柔らかな当たりだからです。
では、どうして①と②とで、こういった差がうまれるのでしょうか?
点検していくことにしましょう。
地雷ワードを避けよう。4つのポイント
1 「私が正しい、あなたは間違っている」という言葉は危険すぎる
上司に向かって「間違っている」といえばどんな目にあうかは、誰でも想像できるでしょう。相手はあなたよりも上の年齢であったり、あるいは職歴が長いわけです。「間違っている」などといったら、馬鹿にされているとおもうことでしょう。
2 「私」と「あなた」ということで味方VS敵という構図がうまれます。
①では「私」、「あなた」の地雷ワードが使われています。
同じ社内の人間であり、協力しあわなければいけないのにもかかわらず、「私」、「あなた」ということによって分断してしまっている。
このために敵対関係が生じてしまうのです。
3 認知的不協和
認知的不協和とは次のようなことです。複数の矛盾する考え方にとらわれたときに生じる。違和感を覚え、落ち着かない気分になり、腹を立てたりイライラしたりする。
こういったことを認知的不協和といいます。
みなさんも心覚えがありませんか?
たとえば、自分の好きなアイドルが何か悪いことをする。
しかし、ファンの中には「いや、彼(彼女)がそんなことをするわけがない。この報道はウソだ!フェイクニュースだ!」といって、真実であるにもかかわらず、アイドルが否定されるような報道を受け入れることができない。
その結果、わけのわからない状態になり、錯乱してしまう。
この上司も自分の尊厳を若手の部下にいわれたことにより認知的不協和におちいってしまいました。
これはもちろん、上司の度量が低いともいえます。
しかし、あなたの伝え方次第で上司の認知的不協和を避けることができたかもしれません。
4 誰でも「自分は世界の中心である」というエゴがある
人間はみなエゴがあります。あなたにも上司にも。
長く働いていると培われる多くの経験や知識が、若い人によって無碍に否定されてしまったら、どんな気持ちになるか想像しましょう。
「それでもいい。俺が正しいんだ!正しいから何やってもゆるされるんだ!」とお考えになる方もおられるかもしれません。
しかし、あなたがその「正しい」を相手に押しつけた結果、喧嘩になったり提案を受け入れてもらえなくなったり、会社から追い出されてしまっても、「正しい」を振りかざし続けることができるでしょうか?
相手には相手の誇りや自信があります。
そういったものを否定すれば、確実に嫌われ、意見をきいてもらえなくなるでしょう。
「正しい」は人を傷つけていい免罪符にはなりません。
子供じみた正義感は捨ててください。
さて、この1~4までが上司に物を言う際に気をつけるべきことです。
これらを踏まえた上で②をみてください。
②の何が①とちがうのか。
上司に提案する際に絶対に考えるべき5つのポイント
では、②の文章をもう一度みてみましょう。
②お忙しいところ失礼いたします。実はわが社にもっと利益をもたらす方策を発見しました。アドバイスを頂戴したいと思いまして。
①とのちがいは以下の5つです
1 上司を関係者としてみる
「アドバイスを頂戴したい」ということで、上司は自分と同じ社の人間であり、この改善に関わる重要人物であると示すことに成功している。
2 否定するような言葉をなくす
「間違っている」という言葉を使わないことにより、上司の認知的不協和が起こらなかった。心を閉ざさずにいられた。
3 上司の自尊心を保たせる
人間は「自分を中心に世界は回っている」というエゴを誰しもがもっている。「アドバイス」を求めているのは自分にである、という思いがエゴを満たした。
4 師弟関係をアピールしている
相談相手として上司を選んだことは、あなたと上司とは信頼関係にあることを意味する。それは、あなたの成功は上司の成功と同じであると考えられる。つまり、上司にとっても利益のある話と化す。
5 好感度をアップさせる
あなたのアドバイスを求めているということは相手を尊敬しているというメッセージになるため、上司は好感をもち、発言を受け入れやすくなる。
と、これらのことを気をつければ、上司は提案を受け入れやすくなります。
まとめると次のようになるでしょう。
相手の自尊心を傷つけず、相手に利益を与え、相手からの好感度を上げる。
成功は皆で分かち合うべし
ここまで来ると、上司に自分の取り分を奪われたと考える方がおられるかもしれません。
確かにあなたの功績によって、製造コストを下げることに成功したのにもかかわらず、上司を巻き込むことで、栄誉が半分になった気がするかもしれません。
しかし、我慢しましょう。
筆者であるジャック氏は次のようにいっておられます。
「栄誉」は賞味期限が短い。それにひきかえ、「善意」は長期保存が可能だ。
あなたがここで上司に「借り」をつくることができるのです。
今ここで、栄誉を独り占めしても、そのあとに待っているのは嫉妬や讒言などの攻撃だけです。
しかし、もし、上司やメンバーやチームとこの栄誉を分かち合えば、多くの人たちはあなたに借りが出来たと思うでしょう。
それが将来、あなたを助けてくれるかもしれません。
独り占めは避けるべき行為です。
終わりに
この他にもひじょうに多くのテクニックがのっています。
「一見普通なのに、なぜかモテる人」や「カモになりたくないときに送る〈敵意シグナル〉や〈人に好かれる公式〉のつくり方」等々。
思っていた以上に密度が濃い本で、勉強になりました。
皆さんもぜひ、本書をご覧になって、人間関係を充実させていってください。
ズンダでした。
しかし、どうしても上司とあわない場合は転職するしかありません。
ということで↓のようなサイトを紹介しておきます。