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MMT 中野剛志『目から鱗が落ちる奇跡の経済教室』についてを語る以前の雑文

 

zunnda.hatenablog.com

MMTとは何なのか?日本を救えるのか?について知りたい方は上の記事をごらんください。

 

 

 

 だいぶ、遅くなっちゃいましたが、発売後、二日ほどかけて読みました。

GW中に感想を書こうかと思ったのですが、他にしなければならぬことがあり、時間があっという間に過ぎていきましたね。寓然と過ごしてしまいました。

 無論、その理由だけではありません。

 

 まず、中野剛志氏、本人による勉強会の動画がyoutubeインターネットTV 超人大陸 」であげられました。同じチャンネルにおいて青木泰樹による解説もあります。

 加えて、三橋貴明氏による解説がチャンネル桜「新」経世済民新聞 三橋貴明 公式チャンネル や松田学氏との合同動画などであげられております。

 そのほかにも大西つねき氏によるものだったり、

肉匠 牛久氏によるなどの動画もあります。

 

www.youtube.com

 

 つまるところ、アメリカで話題になって、日本のMMT界隈が騒ぎ出したのが三月の中旬頃だったのですが、そこから一ヶ月が経ち、だいぶ動画がそろってきたために、この感想文も陳腐なものにしかならないな、という一種の時代遅れな気分に私はっております。

 いってしまえば、本のレビューなぞ読まずに上記の動画を見た方が一目瞭然だからです。

 

 どの動画も非常にわかりやすいです。これらをみて疑問に思うことなど殆どなにもないでしょう。

 MMTのとば口は主流派経済学に毒されていなければいないほど誰にでも理解できるようなものだからです。

 ある意味でいうと、ようやく庶民のための役に立つ経済学が登場したというべきでしょう。我々は歓呼としてこれを受け入れるべきです。

 

 しかし反面、私は些かの不安を覚えております。

 MMTが話題になった後、四月七日にTwitter上で次のようにかきました。

 

 この件のはなしではないが、世の中って何か流行始めると、俺の方が昔から研究してた、俺の方がこいつより詳しいみたいなマウントの取り合いがはじまって俗世ってむなしいと思わされる。そんなにわかってるなら、お前が初めに何かやってみせればよかっただろう、と指摘したら黙ってくれるんだろうか。

自分が二番手になってしまうことが悔しい上に、今まで誰からも相手にされずにしこしこ研究してきたが、それが陽のめを浴びるようになって、幾許かの自尊心が満たされ、更に自己顕示欲を発揮したくなるがためにマウント取りたい人になってしまうのをみるにつけ、うんざりする。MMT界隈を観察して絶笑。

 別に教義でもなんでもないんで、批判大いに結構で、侃々諤々とやればいいが、単純に慇懃無礼な文体で相手を揶揄ってるのはいかにもネット弁慶陰キャの象徴をギュッと詰め込んでいて見苦しいことこの上ない。吐き気を催す。わざと朦朧体で書くことで自分は批判を食らわないようにしてるのも見え見え。

 ついでにいうと、中野のMMT論は間違いなく彼のナショナリズム論と併せて読まないと意味がなく、藤井三橋はそもそもMMTを知っていたのか判然としない。どちらにしても、この三者ともにMMT支持者というよりもMMTの隆盛を利用して財政均衡主義を打ち砕くことが主眼なんだろう。

 

 

 如上の文はMMT界隈に対して私が観察していて思ったことです。

 つまり前からMMTを研究していた自分こそが、本来であるならば注目されるはずの人間なのにもかかわらず、中野剛志によって先を越されてしまったことが悔しかった一部の人間の醜態とその窺覦とに間然する所があり、私は何となしに嫌な気持ちになったからでした。

 

 実際、MMTに関していえば名の知れた日本人で言及していたのは中野剛志『富国と強兵』でした。

 

富国と強兵

富国と強兵

 

 

 しかも、中野氏の本はMMTを語るためにかかれたものではありません。彼のナショナリズム論を補強するかたちで、触れられたものであり、当然、頁数もそんなに割かれてはおらず、主眼は別にあったというのは本書を完読した人間ならば誰もが知るところでしょう。

 彼は自分の経済観をポストケインジアンに負っているといっていますし、あまりいわれてませんが、『レジーム・チェンジ』という本に書かれている経済学者達の名前をみれば、ここからMMT にいくのは至って自然なことだとわかるでしょう。

 正直言えば、同じ時期にでた三橋貴明日本人が本当は知らないお金の話 』(ヒカルランド)のほうがMMT的です。

 

 

レジーム・チェンジ 恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書)

レジーム・チェンジ 恐慌を突破する逆転の発想 (NHK出版新書)

 

 

 

日本人が本当は知らないお金の話 (Knock‐the‐knowing)

日本人が本当は知らないお金の話 (Knock‐the‐knowing)

 

 

 皮肉なことに中野氏はMMTの研究者ではないが、日本のMMT 界隈の誰もが本を出版するほどの力をもってはいなかったために言及され、一部MMT 論者に戯文でもって揶揄されてしまったのは不幸なことです。

 

 私は一部の人、ブログの文体、人をおちょくった感じのものにも気持ち悪さを覚えました。

 

 むしろ、MMT界隈の人間は己の力のなさを嘆くべきでした。もし彼らが電子書籍にせよ、MMT についての何かしらかの纏まった文章を発表できていれば別に中野氏に先駆けされることなく、自己の優越を誇れたはずです。

 

 無論、MMTアメリカにおいてもインチキ経済学呼ばわりされているわけですから、日本ならば尚のこと等閑視されていたのでしょう。

 

 いいですか、『富国と強兵』はMMT についての本ではありません。

 しかし、MMTについて触れていたために参照されるはめになったわけです。これは中野氏の先見の明でもあります。

 

・ MMTは日本において翻訳書が一冊もない。ランダル・レイの翻訳書がついにでることは決まっている。

・日本語で情報を得ようとした場合、経済学101というMMTの有志達による翻訳を頼るしかない。

・中野剛志『富国と強兵』、そして今だと『奇跡の経済教室』に載っている。

 

 

 この状態で、MMTについての正しい認識、正しい知識とやらを得ることはまず無理難題です。

 ちょうど、肉匠牛久氏の動画でも最初の方で「この動画は初心者がわかりやすく、MMTを理解できるようにしたものであり、専門家の方々がコメント欄で色々かいておられたが、そこらへんを酌み取ってもらいたい」というようなことを仰いました。

 

 つまり、自称MMTの専門家達が承認欲求を我慢できず、暴走してしまったというわけです。

 

  私もよくわかります。誰だって、自分がその研究において一番になりたいものです。先駆者になりたいのです。ましてやMMTという蔑視されてきた学問が漸く旦朝を迎えて、わくわくする気持ちは理解できます。

 たいして知りもしないが、MMTの隆盛にのっかって、動画再生数を伸ばそうとする連中やら評論家にたいして「君ら、どこまで理解してるの?そういうの記問の学っていうんだよ、しってる?」とちょっかいかけたくなる気持ちもわかります。

 

 しかし、いったん、落ち着きましょう。

 

 あなたがたはアメリカで話題になるまで何も出来なかった。

 そして、MMTってなんなんだ?となった人々に対して、皆が参考文献として名前を挙げた本は『富国と強兵』でした。これが現実です。

 

 そしてこれから先、MMTを率先して日本で広めることができるのも彼らです。

 当然ですね。知名度がある上にテレビの出演やyoutubeでの動画活動などもやっているわけですから。考えるまでもありますまい。

 何だったら雑誌『クライテリオン』でケルトンを呼ぶかもしれませんし他のMMT学者との対談、座談会などもあるかもしれない。

 

 すると、MMT研究をしてきたあなたがたは受けいれざるを得ないことがあります。

 もはや自分たちはキープレイヤーではなくなっている、ということです。

 脇役なのです。

 今まで、研鑽を積まれてきた功績はあるし、それは誰もが称賛すべきことです。

 けれども、自分たちが主役になることはありません。

 

 すでに棋峙の時代は終わっております。為すべき事を為せる人たちは中野剛志、藤井聡三橋貴明などのメンツだけです。

 ちなみに本稿を書いている際に

 MMT界隈の政局談義|低学歴ワープア人間|note

 という素晴らしいMMTerをウォッチングした文章をみつけ、三嘆しました。

 

  簡潔にMMTerの問題点を書き切った文です。

  seinかsollenかによる古めかしい対立構造や左右のイデオロギーによる違いがMMT論者にも存在しているということが、当世風のMMTにも表徴されていることがわかり、面白い。

 

 結局のところ、一般人にとって重要なのはMMTの完璧な理解ではなく、MMT的なものが行われるかどうか。つまり、藤井、中野、三橋や財政出動に賛意を示す人間たちの本願は反緊縮なのであります。そして、緊縮を壊すがために折良く福沢諭吉いうところの外刺がやってきた、そういうお話ですね。

 

 専門家であるMMTerと実務的な、政治的な人々との間で齟齬をきたしているわけです。

 

 さて、ここからはあくまで個人の感想による結尾になります。

 私としては専門家が厳密になるのは当たり前だし、一般人がそうなれないのも当たり前なので、お互いに啀み合うのではなく、ほどほどに付き合うのがいいとおもいます。

 

 究極的な目標は景気がよくなることなのだから、そこだけは互いに協力しあえばいいではないか。

 それこそ、左右の対決から逃れてようとした令和ピボットという政策集団も立ち上がっております。

 政治は政治的な動きをしないと変わらない。非常に悲しいことだが純粋に正否をいっていても、MMT的なことが政治家に利用されなければ意味がないのですね。

 

おしまい

 

富国と強兵

富国と強兵

 
目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】


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