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【新書紹介】山本圭『嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する』を紹介する!!!

嫉妬論の書影 光文社公式HPより

 

 

政治学者が嫉妬について書いた本。
政治学者なのに心理学で問題になりそうな「嫉妬」について書くのだろうか?という問いに対し、
民主主義社会におけるここ数年の出来事は嫉妬の要素があるからだとこたえている。


嫉妬を考える政治学の研究が引用されており、そんなに意想外な主題でもないらしい。
私が知っているものだとエリートでありながらもそれに見合った仕事にありつけなかったエリートによる反逆をピーター・ターチンが「エリートの過剰生産」(Elite overproductionm)と述べており、これも嫉妬によるものだといえよう。

 

第二章の「嫉妬の思想史」ではプラトン、イソクラテスプルタルコストマス・アクィナスなど13人の思想家たちによる「嫉妬論」が紹介されており、思想史としてまとめられており勉強になる。結局、嫉妬というのは自分に近い相手方がいる場合に起こりやすい。


私たちは全く知らない金持ちや遠い芸能人などをみてもそんなに嫉妬することはない。
むしろ、同級生や先輩などの近しい間柄の人が「上にいること」に対して嫉妬を抱きがちであろう。


その嫉妬に関するアレコレを紹介したあと第五章で「嫉妬と民主主義」についてかかれる

 

「嫉妬」の感情は相手を蔑み卑しい感情ばかりではない。嫉妬するからこそ政治家や大企業などにいる人々への不平不満が炸裂し、
民衆は政治に興味をもち、上流への是正を促すという利点があるのだ。 


もし、民衆が嫉妬を覚えなければ彼らの政治関与へのエネルギーは小さいものとなり、
利得を貪るだけの倨傲な代議士らをのさばらせてしまう「嫉妬による世直し効果」があるのだという。


これには同意である。結局、嫉妬は人間にはつきものだし、
高飛車で貪婪な人間が不正を行っていることはよくある。その修正のために嫉妬による力は機能するだろう。「ルサンチマンではないか?」というのは事実かもしれないが、それが必ずしも悪いわけではない。

 

 
↓以下、政治絡みの本を紹介した記事です。読んでくださるとうれしい