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【映画化】LGBTQだけが注目される「社会正義」は正しいか?朝井リョウ『正欲』(新潮文庫)の感想【考察・ネタバレ】

 

 

映画化してます

 

 皆さん、こんにちは。

 ズンダです。

 

 今回紹介する本は朝井リョウ『正欲』(新潮文庫)です。

 

 朝井氏といえば当ブログで以前紹介した、『何者』ですが、今回の本も楽しませて頂きました。

 映画化も決定しており、十月ぐらいに公開予定なのそうなのでみにいきたいところですね。

 

 

bitters.co.jp

 

 

 

 この作品のテーマ

 

 LGBTQなどに代表されるマイノリティ理解への道程は舗装されていくなかで、それらに属されることのない性質を私たちは見過ごしてはないだろうか。

 

 未だに性質として扱われることがない特殊性癖をもった人々、彼らに対して我々は何ら言葉を持たない。しかし、彼らは法律で裁かれてしまう。

 

 ある一定の人間にだけ理解を示し、その他の人間に対しては一顧だにしようとしない「社会正義」とは本当に正義といえるのだろうか?

 

 朝井リョウはこの作品において義烈な志を抱き、現代社会の中途半端な正義に対抗したように思われる。

 

 一方で大衆文学らしい落ちのつけかたにはあまり感心しなかった。三人の主人公たちを交錯させようとするがために意想外なオチをつけようとしたのだろうが、日付の記載やこの手の書き方、ましてや一人が検察官では顚末がどうなるかは想像しやすい。

 
 書かれた内容が内容だけに収束は三者バラバラであってもよかった気がしないでもない。

 終わり方のせいで陳腐になってしまったように感じてしまった。

 

 この作品への誤読

 以前、Twitterをみていたところ「朝井リョウの正欲が政治的に問題になっていることをその人の性癖として扱えなかったところをみると、闇がふかいな」と感想文をかいている人がいた。

 

 しかしこれは完全に誤読である。

 

 この小説のテーマは「なぜあることは問題になるのに、あることは問題にならないのか」である。

 

 その政治的なテーマにのぼるような大きな性癖を小説のネタにすることは、作者が描きたい微少ではあるが本人の人生にとっては重要な問題というテーマからはずれてしまう。

 

 こういった「何か大きなもものをおそれて、作家はかけなかった」という感想は単なる「陰謀論」である。

 

 巨悪が存在し、その巨悪に作家がおそれてかかなかったという読みは浅い。

 

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