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フィードバックはなぜ重要か 『超一流になるのは才能か努力か』より【勉強やスプラトゥーン2のようなゲームプレイヤーへも】



 今回の記事は私の愛読書であるアンダース・エリクソン氏の本から「フィードバック」の重要性とそのやり方についてを紹介します。

 

 

 

 

 

 私自身、語学や仕事で使うノウハウを身につけるために日々、何らかの勉強をしています。
 
 最近だと『スプラトゥーン2』というゲームですね。

 どんな分野であれ、人間が何かに習熟するための適切な方法があります。

 その一つが「フィードバック」です。
 
 

 能力を伸ばすために必要なこと

 そもそもフィードバックってなんのこと?

 

 feed back=反響、反応すること

 という意味です。

 

 『明鏡国語辞典』によると次のように説明されています。

 

 

①電気回路で、出力の一部を入力側に戻して出力を調整すること。増幅器・自動制御装置などで使われる。

②結果が原因の側にもどって原因に影響を与えること。また、結果にあらわれた不適切な点をみて原因の側を調整すること。

 

 
 もちろん、ここで私が記したいのは②についてです。

 

 フィードバックの流れ

 

 何かをする→誰かに評価してもらい、何が弱点かを指摘され、どう直すのかまで教えられる→欠点を修正する

 

 こういった一連の行為をフィードバックといいます。
 
 

 なぜフィードバックが大事なのか

 

 著者であるエリクソン博士は放射線専門医がマンモグラム(乳がん検査で使う。X線で撮られた写真)を正確に読める訓練法として、次のように提案したことがあるそうです。

 

 

 患者のデジタル化されたマンモグラム写真と、その患者に癌があったのか。合った場合はどう進行したのかを集める。
 
 写真は癌なのか、あるいは良性なのか、見分けにくいモノを中心にする。

 

 コンピュータープログラムでフィードバックを受けられるようにする。
 

 訓練生が間違えたら、似たような写真をみせ、正しく判断できるかを行う。

 

 この結果、2015年の調査ではトレーニングのおかげで能力が向上したという研究結果が得られた。

 この他にも子供の足首のレントゲン写真を使った訓練などもあったそうです。

 

 エリクソン博士は次のようにまとめておられます。

 

 このように(メンターあるいはコンピュータプログラムから)即時フィードバックが得られる練習法は、技能向上にとほうもない威力を発揮するのだ。しかもあらかじめ新米の放射線診断医を悩ませるような問題を特定し、そこを集中的に訓練するような内容にしておけば、訓練プログラムの効果はさらに高まったと思う。

 

 

 さて、この実験は、適切なフィードバックは能力向上に役立つことを証明しています。

 我々が自身の技能を伸ばしたいのであれば、伸ばしたいことに集中して、ひたすら「正解なのか間違いなのか」を意識しつつ練習しなければならないのです。

 エリクソン博士はこれを「限界練習法」と述べておられます。
 

 *1

 

 「知識」と「技能」は違う

 

 講義やセミナーを受けても力はつかない

 

 2005年にハーバード・メディカルスクールの研究チームが発表した論考があります。

 それは、「医者が提供する治療の質が時間とともにどのように変化するか」といったものでした。

 私たちは次のように考えることが多いのではないでしょうか。

 

 医者としての経歴が積まれれば積まれるほど、診断する力が上がり、患者の病気や治療法を即座に見つけられるようになる、と。

 

 しかし、この研究が明らかにしたのは全く別でした。

 引用します。

 

 

論考の対象となった六〇あまりの研究のほぼすべてにおいて、意思の技能は時間とともに劣化するか、良くても同じレベルにとどまっていた。年長の意思の法がはるかに経験年数の少ない医師と比べて知識も乏しく、適切な治療の提供能力も低く、研究チームは年長の医師の患者はこのために不利益を被っている可能性が高い(※この日本語はおかしい。可能性は【ある】か【ない】かでしかいえない。蓋然性にすべきである。)(中略)経験を積むほど医師の能力が高まっているという結果が出たのは、六二本の研究のうちわずか二本だった。医師を対象に意思決定の正確さを調べた別の研究も、経験年数が増える恩恵はごくわずかであることを示している。

 

 

 

 更に看護師も同じ傾向があることを述べて次のようにまとめておられます。

 

 いずれにせよ、一つだけはっきりしていることがある。わずかな例外を除いて、医師も看護師も経験を積むだけでは高度な専門能力を身につけることはできない、ということだ。

 
 なんということでしょうか。
 
 あることに長期間に亘って従事し、講義やセミナーを受けていても、その人の能力は伸びないことが判明したのです。

 

 たとえば、私で言うところの『スプラトゥーン2』がこれに当てはまりますね。
 長時間かけても、動画をみても、大してうまくなっていません。

 

 あるいは、受験生の方などはどうでしょうか。

 

 東大受験生、TAWASHIの失敗はなぜ起こるのか
 
 

 二〇一九年にお笑い芸人であるTAWASHI(たわし)氏が、ホリエモンこと堀江貴文氏が企画する番組「ドラゴン堀江」に受験生として出演されました。

 

ja.wikipedia.org

 彼は半年間みっちり勉強し、一次試験は乗り切ることが出来たのですが、二次試験で落ちてしまいます。

 

 今年も受験しましたが、再び落ちてしまいました。
 ほぼ毎日、独学で、一日八時間から十時間ほど勉強していたのにもかかわらず、です。

 そして彼は三回目の東大受験を誓っています。

 

 しかし、このエリクソン博士が行った実験を鑑みるに、TAWASHI氏はまた落ちてしまうのではないでしょうか。

 現に彼は二次試験の成績が「一三点」しか伸びていないことがわかっています。

 

 コレは明らかに成長が限界に来ていることを示しています。

 ※それ以前に、東大自体が難しいので、もはや学習方法でどうにかなるのか、という問題はある。合否は別として、点数を上げようと考えれば、もっと良い方法はあった、という程度の話である。

 

 
 能力向上のために我々が出来ること

 インタラクティブでなければいけない

 

 では、いったい何をすれば能力は伸びるのでしょうか?
 
 トロント大学の医師兼区教育科学者であるデイブ・デービスの実験が紹介されています。

 彼は、講座、会議などの集会、講義、シンポジウム、医療ツアーなどの活動を調べ、それらの中で、学習者にとって何が有益であるのかを調査しました。

 

 次のような結果がでたそうです。

 

 最も効果的な介入はロールプレイ、ディスカッション、問題解決、実施訓練など何らかのインタラクティブな(相互作用的)要素を含むものであることがわかった。

 

 

 これを受けて、エリクソン博士は次のように述べます。

 

 限界的練習の観点に立てば、何が問題かは明らかだ。講義やミニコースなどに参加しても、フィードバックを得たり、新しいことに挑戦してミスを犯し、それを修正することで徐々に新たな技能を身につけていく機会はまったくと言ってよいほどない。それではマチュアのテニスプレイヤーがテニス雑誌を読んだりときどきユーチューブの動画を見てうまくなろうとするのと変わらない。

 
 これが研究で分かっていることなのですね。

 

 インタラクティブな作業で挙げられたロールプレイやディスカッションをみればわかるように、知識を授かるだけではダメなのです。

 先生や指導者に自分のもっている技術を見せ、それが修正されることでしか能力向上は望めない。

 

 すなわち、フィードバックということですね。

 ※インタラクティヴとフィードバックはやや被っているように思える。 

 フィードバックをする以上、他者が必要である。インタラクティヴの中にフィードバックが内包されている。

 強いて言うならば機能とやり方の違い。

 インタラクティヴ=双方向的な属性(ロールプレイやディスカッションを指す。)

 フィードバック=結果への評価

 

   先生を見つけただけで安心するな

 

 
 ありがたいことに今では先生は見つけやすい。

 私がゲーム配信をすれば、誰かしらかが、私に教えてくれます。

 

 

 自分の動きの何がまずかったのか。
 どうして、試合に勝てないのか。

 

 

 ですが、これだけだと効果は薄いのです。
 上記したように、インタラクティヴ(相互作用的)でなければいけません。

 インタラクティブとは一方通行な教えのことではありません。
 
 それではセミナーや講義と何も変わらないですね。

 

 先生がただ教えるだけでは足りません。 
 

 インタラクティブを利用した勉強法

 

 生徒自身も「何がわからないのか。何ができないのか」を見つけ、それを先生に逐一ぶつけて、先生がそれに答える。

 受動的ではなく、お互いが積極的にやりとりする。
 この行為こそが上達への道なのです。

 

 私が技術を見せる→指導者がすぐに修正する→指導者の言うとおりにやる→うまくいかない→指導者が教え方を工夫して教える→指導者に何がわからないかを述べる→指導者がそれに対して答える→私は意識してそれをなおす→指導者はそれでは足りないとまた直す・・・以下、できるようになるまでこれを繰り返し続ける

 
 と、こんなふうにやる必要があります。
 非常に根気の要る作業です。

 

 ですが、人間が能力を身につけるとはこのぐらい大変なのです。

 単に本を読んだり、授業を受けるだけで、成績が上がるのであれば、落伍者などいません。

 実践し、それを直してくれる先生に出会うことが欠かせないというお話でした。

 

 では、またズンダでした。
  

 ↓スプラトゥーン2というゲームでX帯に上がったときに書いた文章です。

 スプラ2の考察と、人間の才能や努力について書いております。

  

zunnda.hatenablog.com

 

 

  ↓「勉強法」について書いた文章です。この『超一流になるのは才能か努力か』が下敷きになっている本の紹介をしています。

 というか、ここ数年の勉強法について書かれた翻訳書は『超一流になるのは才能か努力か』が常に参照されていると思えるぐらいエリクソン博士は名高いです。

zunnda.hatenablog.com

  

 ↓これは今月発売された所謂「勉強本」ですが、この中でもやはりエリクソン博士の研究が出てきます。

 ちなみに、単純なやり方だけでいうとこちらのほうが纏まっている本なので、勉強を効率よくしたい方はぜひ。

 

  ↓メンタリストDaiGo氏によって書かれた本です。以前も書きましたが、DaiGo氏の本はお財布に優しいといえます。彼の本の特徴は「ここ数ヶ月内に発売された本の内容を取り込み、自分のネタとして一冊にまとめる」ことにあります。

 

 すなわち、十冊二十冊ぐらいの内容が彼の本を買うことで知ることができてしまうのです。

zunnda.hatenablog.com

 

*1:※ちなみに本書において世の中にある練習法は三つあることになっている。
 一つは何も考えないで、作業を繰り返すだけの「愚直な練習」(何も考えずに英文を音読したり、何も考えずに青チャートを繰り返し解いたりするような練習)
 

 二つ目は「目的のある練習」
 これは以下の4つの要素からなる。
 ①目的のある練習には、はっきりと定義された具体的目標がある。
 ②目的のある練習は集中して行う
 ③目的のある練習にはフィードバックが不可欠
 ④目的のある練習には、居心地の良い領域から飛び出すことが必要

 三つ目はエリクソン博士が述べる「限界的練習法」である。「心的イメージ」を学習者にもたせることが中核である。この「心的イメージ」については本書をご一読ください。